第6話 学校一の有名人(完璧美少女)
すいません、少し遅れました。
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「———眠すぎるんだが……」
俺は学校に向かいながら、大きく欠伸をする。
結局昨日は、無理に身体強化を長時間使った反動による強烈な倦怠感に初めてファンタジーな生き物に会って命の取り合いをしたということもあり、結局一睡も出来なかったのだ。
そのせいで休めてないからか未だに身体が重たいし常時睡魔が襲い掛かってくる。
「これは全授業フル睡眠コースだな……」
多分何回かは確実に起こされる未来しか見えないが、今日だけはしぶとく寝てやろうと思う。
寧ろ追加課題出してくれてもいいから寝かせてほしい。
マジでそれくらい眠たいのだ。
俺が無限に出る欠伸を噛み殺していると、学校に近付いてきたからか段々登校してくる生徒達の数が増えてきた。
それ自体は至極当たり前のことなのだが……昨日結構大きな爆発音を鳴らしてしまった手前、もしかしたら噂になってるんじゃないかと若干怯えているわけである。
ということで、俺は試しに近くにいる男子生徒二人組の会話を盗み聞きしてみることにした。
勿論身体強化を耳の部分だけにして聴力を強化しながら。
「なあ、聞いてくれよ」
「何だよ、急に」
「実はな、俺……」
「おい溜めんなって。それでおもんなかったら許さんからな?」
「まあ落ち着けよ。はぁ……せっかちはモテんぜ?」
「黙れ。お前もモテてないだろうが」
お?
何だか聞いてる俺にまでダメージが来るんだが?
もしかして盗み聞きしてるのバレてます?
俺は無意識に流れる雫を拭いながら話を聞く。
本来なら俺の話をしてないから直ぐに別のグループに移っても良いんだが……如何せん話が気になる。
あの男子、将来は敏腕営業マンかコメンテーターにでもなりそうだ。
「実はな……俺、遂にあの
「「……何だよ、クソおもんな。はい、フラれるの確定乙」」
「おい酷すぎるだろお前!? 少しくらい応援してくれたって……あれ、今声が二重に聴こえたんだけど……?」
俺は何事もなかったかのように二人を追い越して先々進む。
その間、二人にバレないか心臓バクバクだった。
あ、あぶねぇ……ついあまりにも無謀すぎて聞き役の男子と同じ反応が無意識に口から出てたわ……。
それにしてもホントにおもんなかったなぁ……寧ろ聞きすぎて飽きたわその話題。
先程の話に上がっていた白百合麗華だが……彼女はこの学校で一番の有名人と言っても過言ではないだろう。
恐らく知らない人間は例えボッチであっても居ないはずだ。
———
俺の一つ上の学年……つまり高校3年生で、日本でもトップクラスの財閥———白百合財閥の御令嬢で生徒会長も務めている完璧美少女。
勿論頭脳明晰、運動神経抜群、顔もスタイルも非常に素晴らしい。
性格も面倒見が良く、ちゃんとしている者には優しく、出来ていない者にも根気強く出来るまで支えてくれるというまさしく神みたいな少女だ。
そして彼女が一番有名人と言われている所以は———その麗しい白銀の髪と青色の瞳にもある。
彼女……白百合麗華は、生徒会長として様々な行事の時に前で話すのだが、その髪と瞳は印象に残りやすく、耳が浄化されるような澄んだ声とマッチしてとても神秘的にまで感じるのだ。
俺も初めて見た時はぶったまげたね。
こんな人間がこの世に存在するんだなぁ……と思ったくらいだ。
よく恋しなかったと昔の俺を褒めてあげたい。
どうせ彼女に恋をした所で……絶対に叶わないのだから。
そう、白百合麗華は様々な男からの告白を断っている。
例えそれが超絶イケメンで性格もいい男子であろうと、全てバッサリと。
そのあまりの断り具合に、巷では「許嫁が居るんじゃないのか」や「女子が本当は好きなんじゃないのか」などと様々な憶測が飛び交っているらしい。
まぁ俺的には、麗華先輩が女子好きでも全然問題ない。
寧ろ素晴らしい百合の光景が見れて眼福だと思う。
白百合だけに……なんつって。
「………………すぅぅぅ……ごめんなさい」
自分でも驚くほどの寒いシャレに、思わず言ってもないのに謝ってしまう。
ただ、所々から「何か急に寒くならんかった?」的な話題が上がっているので相当だったのだと思う。
「俺、もしかして魔力使わなくても氷魔法使えるのかな? わーい……すぅぅぅぅぅ、もう何も言うのやめよ」
今日は眠たいせいか物凄く調子が悪い。
もう気にするのは止めてさっさと学校着いたら寝よ。
俺はそう決意して、足早に学校へと向かった。
———なんて登校中に考えたりはした。
何なら関わりがあったらな、とかも一瞬思ったりもしたよ。
したけどさ……。
「———ごめんなさい、少し貴方……石田柚月君に用事があって来たのだけれど……今大丈夫よね?」
まさかその白百合麗華先輩が、こんなピンポイントで来るとは思わないじゃん?
しかも俺の目の前で、俺と目を合わせながら言うんだよ?
何でだよ。
俺は内心焦り散らかしながらも無視するわけにもいかず、若干吃りながら返事をした。
その間もずっと男性陣から物凄い殺気だった視線を浴び続けるのは、思いの外結構メンタルにきたとも言っておこう。
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