第13話 俺のパンツ、盗まれる
部屋でテレビを見ながらウトウトしていると、ベランダから物音が聞こえた。
――なんか、デジャブな感じがする。
洗濯用ハンガーがじゃらつく音がカーテンの向こう側で聞こえる。今回は明らかに俺のベランダから聞こえる音だ。
俺はまさかと思いながら、カーテンまで忍び寄る。
下着泥棒が多い地域とは聞いていたが、まさか俺の下着をあさろうと思うやつなんていないだろう。
――まぁ、風のせいでハンガーが揺れてるだけだろうな。
カーテンを開けるとベランダの外から俺の下着に手をかけている人影を見た。
「黒川さん!?」
俺は掃き出し窓を開けて、今まさに俺のパンツをポケットに入れようとしていた黒川さんに向かって問いかけた。
「――何してるんすか!?」
「――見つかってしまいましたか……」
「見つかってしまった、じゃなくて! そんなところで何してるんですか!?」
「下着泥棒です」
黒川さんは堂々とした様子で言い放った。
「――え。黒川さんって盗まれるのが趣味だと思ってたんですが、盗むのも趣味だったんですか?」
「心外ですよ沢村さん。とりあえず、理由を説明させてください。今からそっちに行きます」
「それで、理由って何ですか?」
玄関まで回りこんできた黒川さんを部屋に招き入れて、俺はすぐに質問した。
「研究をしていたんです」
「研究?」
「下着泥棒の行動を疑似体験することで彼らが何を警戒しながら犯行に及んでいるのかを理解できると思ったんです。彼らを知りたければ、まず彼らに成ってみようと」
「いや! ダメでしょ!! 」
黒川さんは俺のパンツを握ったまま少し考え込むと、
「もしかして、私パトカーいきですか?」
不安そうに言った。
「いや。 警察は呼びませんけど、流石に友だちとはいえ無茶しないでくださいよ」
「すみませんでした」
黒川さんは俺のパンツを握り締めたまま頭を下げた。
「まぁいいです。――それより、本当に他で下着泥棒をしたりしていないですよね!?」
「ええ。安心してください。 今回は研究も兼ねたちょっとした冗談です」
――冗談って……。
「そんな冗談、俺以外にしちゃ駄目ですよ?」
「しません。安心してください」
「それじゃ、パンツ返してください」
「分かりました」
黒川さんは握り締めていたパンツを俺に手渡すと、続いてポケットに詰め込んでいたパンツを俺に返した。
「――あれ? 黒川さん。これで全部ですか?」
「全部ですよ」
「――え?」
「え?」
――パンツが2枚足りないんだけど。
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