本懐

くくる

青銅色のポスト

自宅のポストは青銅色せいどういろをしている。自分は地味な色に見えるが、母は好きらしい。

毎週火曜日、午後4時。玄関に行く前に、ポストに手を掛ける。かしゃんと音を立てて開いたそれの中には、白い封筒がひとつ入っていた。

紙浦かみうら けい 様』

宛先にすこし丸みのある柔らかい字で俺の名前が書いてある。

毎週火曜日、午後4時。俺は親友からの手紙を片手に、自宅の玄関の鍵を開ける。この手紙が私の楽しみの一つ。

スマホもガラケーも持っていない親友との、静かで時間と手間の掛かる会話。

俺はいつも親友からの手紙を待っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る