愛獣~愛を喰らってなお生きる~

@tyoko_reta

第1話 愛獣

愛獣、それは大昔から人間と生活を共にしてきた。

彼らは”愛”を糧として生きている。つまり、彼らにとって孤立とは”死”を意味するのだ。そのため、極度の飢餓状態になると、人を襲うこともしばしばだった。

そして、いつしか愛獣は「人喰い族」と恐れられるようになってしまった。


愛獣は正体を隠して生活をするようになった。

そうして愛獣は都市伝説と化した。

しかし、愛に飢えた愛獣が集団で人を襲い、重軽傷者が多く出て、マスコミに”多摩川愛獣事件”が大々的に報道されてからは、”愛獣”の存在がはっきりしてしまった。


その事件から15年、法律も愛獣法などが作られ、愛獣でも人権がしっかり守られ、食料支援などもが受けられるようになった。

しかし、愛獣に対する偏見は絶えなかった。


「学校なんて行きたくない。」

「だめだよ、お姉ちゃん。もしも私がいなくなったらお姉ちゃん、愛がもらえなくて死んじゃうんだから、ちゃんと愛される練習しないと。」

「なんで愛獣に生まれたんだろう。」

「しょうがないよ。そういう運命だった、それだけ。でも、愛獣でもそこまで困らないよ?」

「あんたみたいに愛されてたらそうでしょうね。」

「もう、、、いっとくけど、私も苦労してんだからね。」

「どこが?」

「お姉ちゃんがお腹すかないように、毎日“愛”をこめてお弁当作ってるんだから。結構大変なんだよ。」

「直接もらう愛の方がおいしいけどね。」

「もう、そんなこと言うんだったらお弁当作らないからね。お腹すいても知らないよ。」

「別にいい。それで餓死するんだったら、次は人間に生まれ変わりたい。」

「そんなこと言わないで。ほら、学校行こう、お姉ちゃん。

お弁当持った?提出物はやった?」

「うん。」

「それじゃあ、行こうか。」

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