第26話 ランスルフーロ王国
ランスルフーロ王国
ランスルフーロ王国の玉座の間では、宰相ベルナールと国王ヴァラール六世が話していた。
「あの生意気な教皇どもをついに潰せる時が来たぞ!」
「陛下、オストマン帝国と組んだからといって、慢心は良くありませんぞ。」
「わかっておる、わかっておる。だが負けはないであろう?あの勇者ケイトまでも送ったのだがな。」
ベルナールは、ヴァラール六世を諌めるようにしていたが、ベルナール自身も負けはないと考えていた。それは、異世界から来た勇者ケイトを派遣したのであったからだ。
勇者ケイトは、1人で何千という兵士に匹敵するほどの優れた魔法を持っていた。しかし、彼は謙虚すぎたのであった。謙虚は美徳とされているが、謙虚すぎるのは周りの人にとって不快感を与えるのだ。
(勇者ケイトは強いのですが、周りの事を考えようとしていないのがキズですね。特に貴族には勇者ケイトを嫌っている者が多くいて困りますね)
貴族は自尊心が強く、幼い時から英才教育を受けていることにより、勇者ケイトが努力もせずに強いのが受け入れられないのである。
それに加えて、勇者ケイトは聖人すぎており、王国では許可されていた奴隷制の廃止を訴えたり、貴族が財を溜め込むのをよしとしないのであった。それにより、反勇者派の派閥が出来ていた。
「あの勇者をこのままにしておけば、貴族との対立は更に深くなるでしょう。このままでも大丈夫なのでしょあか?」
「大丈夫だろう。逆に貴族の力を削ぐチャンスではないか!あわよくば王権を強くする事が出来るのだ。」
(王権を強くするのは良いですが、貴族が居なくなりすぎると国は回らないのですがね。その場合はどうするつもりなのでしょうか……)
「遅れてすいませんでした。今回の軍事行動の準備をしておりました。」
「ふん。それっぽい理由をつけているだけではないのか?」
「まあまあ、シャルル様も謝っておられるようですので、許してやりませんか?」
「そうだな!お前はもっと勇者ケイトを見習うのだぞ!」
シャルルと呼ばれているこの男は、ヴァラール六世の息子のシャルル第一王子であった。
反勇者派の筆頭である事により、実の父親である国王のヴァラール六世から疎まれており、貴族達からは王太子の地位を授けられないのではないかと危惧されている。
(あの勇者は国内を分断する元だ。早めに排除しておかないと取り返しのつかない事になるぞ。バカ妹と父上は分かっていないのだ。世の中は清廉潔白の者ばかりではない事を。)
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勇者ケイト 17歳
ランスルフーロ王国民からは絶大な人気を誇る異世界転移して来た勇者。出身地は東京。同時高校一年だったケイトは帰り道、車に跳ねられ気づいたらこの世界に転移していた。
国王の娘を魔物から助けた事により、騎士の称号を授けられた。ランスルフーロ王国の第二騎士団に所属しているが、役目は遊撃部隊となっており独自の動きが出来るようになっている。
魔法については、国内において右に出る者がいないが、身体能力などは一般兵よりも弱い。
聖人と言われており、民衆には優しいが貴族については、ほとんどが民衆から税を貪る害悪だと見做している。勇者の周りには、魔物から助けられた第一王女、奴隷として飼われた獣人族の少女、エレンジア王国からの亡命貴族の娘がいる。
ヴァラール六世
これまでの統治から決して名君というわけではなく、むしろ国を衰退させている君主であるとも言える。
勇者ケイトの才能に惚れ込んでおり、自身の息子であるシャルル第一王子よりも娘である第一王女を王座につけ、勇者ケイトがその夫として国を守ってほしいと考えている。
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