第35話   戦魔大陸への上陸、姫川花緒VSケルベロス!

「あーし、ついにここまで来たか」


 風が顔に当たり、心地よい緊張感が全身を包む。〈エアワン〉に乗って海を越え、あーしはついに戦魔大陸へ上陸した。


 上陸したのは海岸の浜辺である。


 途中までは超大型の台風や雷の雨に打たれて驚いたが、結果よければオールOKとあーしは気持ちを切り替えている。


 ここは魔王がいる戦魔大陸なのだ。


 それに戦魔大陸の魔物は他の大陸にいる魔物よりも何十倍も強いらしい。


 くう~、燃える!


 あーしが武者震いしていると、ドローンの配信画面にリスナーたちのコメントが流れてくる。


『マジでこの大陸に魔王がいるのか!』


『花ちゃん、頑張って!』


『新しい冒険楽しみにしてる!』


『絶対に勝ってね!』


『そろそろ地球に帰ってきてほしいから、ちゃっちゃと魔王を倒してください』


『フレー、フレー、は・な・ちゃ・ん!』


 リスナーたちの声援が背中を押し、あーしの心に勇気を与えてくれる。


 もちろん、頑張るよ!


 あーしは意を決すると、〈エアワン〉から降りた。


 足元に広がる大地の感触を確かめる。


 戦魔大陸の空気は、どこか重々しく感じるが、それがこの場所の厳しさを物語っているようだ。


 浜辺を抜けた遠くのほうには広大な草原が広がり、そのさらに先には巨大な山脈が連なっている。


「さて、肝心の魔王城はどこかな……」


 あーしは周囲を見渡しながら、一歩一歩確実に進んでいく。


 浜辺を抜けて草原へ。


 草原エリアは風が草花を揺らし、遠くの山々がその静けさを保ちながらも、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。


 あーしはちらりと配信画面を見た。


 配信画面に映るリスナーたちのコメントからは、期待と興奮、そしてわずかな恐怖が窺える。


「みんな、大丈夫。あーしは誰が相手だろうと負けないよ!」


 と、宣言した直後だった。


 突然、地面が激しく揺れ始めた。


 振動が足元へと伝わり、次第に大きくなっていく。


「あれは……」


 前方の草むらが激しく揺れ、巨大な影が現れた。


 その姿を見た瞬間、あーしの心臓が強く鼓動した。


 現れたのは、3つの頭を持つ巨大なケルベロスだった。


 全長は軽く5メートルはあるだろう。


 黒い毛は剣山のように逆立ち、6つ目からは凄まじい威圧感が放たれている。


「あんたが最初の相手ね!」


 あーしが人差し指を突きつけながら叫ぶと、ケルベロスは空気を震わせるほど吼えた。


 同時に、あーしに向かって一直線に突進してくる。


 ガルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 あっという間に間合いを詰められ、ケルベロスは前足で攻撃してきた。


 その一撃は暴風を巻き起こした。


 瞬間、あーしは50倍〈光気功〉を発動し、その攻撃をかわした。

 

 あーしは再び〈光気功〉を発動し、ケルベロスの攻撃をかわし続ける。


 リスナーたちの応援コメントも、一層激しくなっている。


『すごい! 花ちゃん、頑張って!』


『ケルベロス強ええええええええええ』


『気をつけて、花ちゃん!』


 ケルベロスは鋭い爪がついた前足で果敢に攻撃してくる。


 その1つ1つが非常に強力で、あーし以外には避けられないだろう。


 それほど戦魔大陸の魔物の力は異常だった。


 でも、あーしは負けないよ!

 

 あーしは冷静に対応し、〈光気功〉を駆使して全ての攻撃をかわし続ける。


「そろそろ行くよ!」


 あーしは集中力を高めながら右拳に〈気〉をまとわせ、ケルベロスの中央の頭に向かって拳を放った。


 バガンッ!


 あーしの右拳はケルベロスの1つの頭を打ち砕いた。


 すかさず追撃。


 残りの頭部も立て続けに打ち砕く。


 数秒後――。


 ドズン、とケルベロスの巨体が倒れる。


 ふう、とあーしは手の甲で額の汗を拭った。


「なるほど、これが戦魔大陸か……どうやら〈光気功〉は常に50倍以上は出していないと倒せないみたいね」


 あーしが深呼吸をすると、コメントが滝のように流れていく。


『やったー!』


『花ちゃん、すごい!』


『この調子で次も頑張って!』


「ありがとう、みんな。これからも応援よろしくね!」


 戦魔大陸での最初の戦いを勝利で飾り、あーしは次の目的地に向かって歩き出した。


「待ってなさい、魔王! この花ちゃんが絶対に倒してやる!」




〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


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