転生なんてしなくても現代でガチで電子書籍出版をしてみたら無双していることに気が付いた。これって、強くてニューゲームって感じじゃない?
白明(ハクメイ)
第1話 変わらない毎日と生活
俺は、変わらぬ毎日をただ淡々と過ごしている。
朝7時:けたたましい音が至福の時間を切り裂く。ここから一日ははじまる。
夜10時:残業で帰宅した時には、既に妻と子どもたちも夢の中の住人だ。
俺は、
そして、今に至る。娘のイロハは4歳、息子のコウタロウは2歳。俺は、給料の運び人となり、休日はシッター、妻の愚痴聞きマシーンとなっていた。
「それでね、イロハのクラスの子がね……」
いつもの妻の愚痴がはじまる。俺は、発泡酒でミックスナッツを流し込む。週末のお決まりの時間だ。
「わりぃ。今日は寝るわ。明日は、イロハたちを連れて公園に行ってくるから。少しゆっくりした時間を送りなよ」
本音なのか、父としてこうあるべきという自尊心からか、妻にそんな薄っぺらい言葉を投げる。
「ん。ありがとう。弘毅。絶対に無理はしちゃダメだよ」
はて? 無理というのは、どういうものだったろうか?
休日の公園というものは、柔らかさと優しさで飾られた、お菓子箱のように感じる。走り回る二人の子供たちを見ながら、ふとしたことで壊れてしまいそうなこの風景をボウッと眺める。この時間はあとどれくらい続くのだろうか? そして、この時間が終わってしまったら、俺は、どうなってしまうのだろうか?
「あれ!? ヤマネコ? ヤマネコだよな!」
目を上げると、そこには懐かしい顔があった。引き締まった身体に、細い顔。軽くカールのかかったやや長めの髪が彼の優男ぶりを強調している。足元には、彼のミニチュア版といった少年が隠れながら、こちらを窺がっている。
「おぉ。壮馬。久しぶり。元気してたか」
幼い頃からずっと一緒。同じクラス。同じ部活。同じバイト。さすがに大学こそ違ったが、その近況は俺の両親から聞いていた。
「こうやって会うのは何年ぶりだろうな? 元気してたか? あそこにいるのは、ヤマネコの子どもか?」
相変わらず社交的な話し方に、頬が緩む。
「そう。イロハとコウタロウ。遊びたい盛りのヤンチャさん達だよ。壮馬のお子さんもそっくりだな」
「だろ? こいつ、行動まで俺そっくりなんだよ。妻からすれば、扱いやすいってよく言われるよ」
いや。奥さんからすれば、ただ似たような行動をとる子どもがもう一人増えただけということなのだろう。ミニチュア版壮馬は、イロハを見つけると、走って追いかける。子どもたちには、物怖じといわれるものは存在しないのだろう。壮馬が俺の隣に腰かける。
「そういやぁ、仕事とか家庭とか、どうよ? あんまり浮かない顔をして、子どもたちを見てたからさ……」
こういうところだ。付き合いが長い分、こいつは俺の雰囲気を瞬間で感じ取る。
「そうだな~。なんか、いろいろと疲れちゃってさ……。無気力っていうのかな? 俺って、一体なんだろうな~とか、最近思うんだよな……」
「あ~、それね。まさに俺らくらいの年齢になると考えちゃうよね~。正直、俺も数カ月前までは、そんな状態だったかな~。なんちゅうか、カラッポになっちまった感覚だよな……」
数カ月前まで……?
「俺さ、こういうのやってんだよ。今のヤマネコみたいに何もなかったとき、偶然出会ってさ。そしたらさ。人生、ちょっと楽しくなってきたんよ」
壮馬は、スマホを俺に突き出した。
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