アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
第1話 プロローグ
「もちろん喜んで……いえ! 悲しいけど、お受けしますわ。ああ、残念。悲しくて泣きそう、心が張り裂けそうですわぁ」
アンジェリーヌは満面の笑顔で婚約解消を受け入れた。
「ぐっ…嘘をつけ! なんだその嬉しそうな顔は! お前は……本当にそれでいいのか!」
「これが私の泣き顔です。ああ、悲しい。涙が止まりません」
アンジェリーヌは目を輝かせ、口角をあげて笑顔以外の何物でもない表情を浮かべ、涙を拭うふりをしている。
「それでは失礼しますわ。正式な手続きはお父様にしていただきますので。ではごきげんよう!」
ロジェのもとを去っていくアンジェリーヌは足取りが軽く、鼻歌が聞こえてきそうなほど上機嫌に見えた。
「あいつ……」
その後ろ姿を呆然と見送ったロジェは、衝撃で固まっていた。
自分から婚約解消を告げたくせに、嬉しそうに承諾されたことが受け入れられなかったのだ。
この婚約はアンジェリーヌが望んだもので、彼女が自分の事を好きだと思っていたから婚約解消をこんなにあっさりと了承するとは思わなかった。
いつもこちらの機嫌をうかがうような大人しいアンジェリーヌ。
それが、今日は全く別人かと思うほどの堂々とした態度で辛らつな言葉をロジェにぶつけてきた。
その態度に苛立ったロジェは、婚約解消を突き付ければ、アンジェリーヌは慌てて態度を改めるか悲しみで顔を曇らせると思ったのだ。
それなのにあんなに嬉しそうな笑顔で了承されてしまったロジェは、逆に自分の方が惨めになりひどく胸が痛んだのだった。
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