　ぼんやりと、自分の部屋の寝台の上に寝転んで、アデルはぼんやりと、今日起きたことを脳内で反芻する。

（………あの子は、もしかして）

　『弟』。そんな言葉が頭をよぎる。「ヨシヒロ」という名前は、父の名前である「ヒロアキ」に言葉の響きが近い。そして、そんな弟が手渡してくれた精緻な肖像画の父の隣に寄り添う見知らぬ女性の姿。

　身籠もった母を置いて、父は『日本』に帰り、そこで新しい家族を作っていたということなのか。

　ならば、そんなことを何も知らずに父を待ちながらさみしくひとり逝った母の人生はいったい何だったのか。

　わからない。何もかもがわからない。一体自分はどうすればいいのだろう。

　神こそが世界が危機に訪れた時に世界に勇者を顕現させしめる、と伝わるこの神殿では、神様に祈る気にもなれなかった。

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