せっかく転生させるというのにこいつといったら

結 励琉

第1話 プロローグ 女神様と俺の、出会いの瞬間、物語の始まりの瞬間

「さあ、目覚めるのです。新しい世界への扉が待っています」


 もうろうとした意識のなか、そんな声が聞こえてきた。

 心に響く、とても美しい声。

 何だろう。朝の目覚めにしては、ちょっと感じが違う。

 俺がいる所も、いつものベッドの上ではなく、何か雲のような、ふわふわしたものの上。 


 俺はまだ、夢を見ているのだろうか。

 それとも、これが今までラノベやアニメで読んだり見たりしてきた、いわゆる転生というものなのだろうか。


 もしこれが転生ならば、目を開けたら、そこに美しい女神様がいるのが定番だ。

 ゆるやかにウェーブのかかった金髪で、透き通るような碧い目。

 足首まであるゆったりとした白いローブを纏い、玉座のような豪華な椅子に、優雅に足を組んでこしかけて、こっちを慈愛のまなざしで見つめていて。

 そして、優しくこう語りかけてくれるのだ。


「あなたは不幸にしてお亡くなりになりましたが、今からあなたの望む世界に転生させて差上げ」

「つまらん!」


「ええー!」

 目の前の女神様がのけぞった。

 そうだろう。

 決めゼリフを遮られた訳だから。


「ちょっと、目が覚めた第一声が、私の決めゼリフがつまらんって、どういうこと!」

 女神様がお怒りになった。

 ゆるやかにウェーブのかかった金髪で、透き通るような碧い目。

 足首まであるゆったりとした白いローブを纏い、玉座のような豪華な椅子に、優雅に足を組んでこしかけて、こっちを慈愛のまなざしで見つめていて。

 そして、優しく語りかけてくれていた女神様が、お怒りになった。


「だって、あんまりにも定番過ぎて」


 これが、女神様と俺の、出会いの瞬間、物語の始まりの瞬間。

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