第102話 捨てられた子犬のように
なんとなく、マリトとの入浴を避けていた幸であったが、マリトは案の定、とても切ない表情で幸に訴えかけてくる。
この表情、この目、、、、もう、本当に母性本能くすぐり放題である。
一体、だれからそんな表情を教わるのだろうと、心配になるほどに、マリトの表情は人気子役も真っ青なほど、見ていて胸が締め付けられるのである。
「ミユキお姉ちゃん、、、、、ごめんなさい、僕ね、、、、もうこの前みたいにしないから、、、機嫌なおして」
もう、、、もう、あー、、、もう!、本当にこの子ってば、可愛すぎ!
「違うのよ、マリトちゃん、もう大きくなったでしょ、だから、お風呂は別々で入るものなのよ、解ってちょうだい」
それでも、マリトの表情は、まるで捨てられた子犬のように、小さくうなだれていた。
「わかった、僕、お父さんに話してくる」
そう言うと、マリトは一人、ラジワットの居る一階へ降りて行った。
、、、、お父さんに、、、、話す?、、、、
何を?。
幸は、てっきりマリトが、幸とお風呂に入りたいと懇願するのだと思っていた。
しかし、その予想は、、、、大分外れたものだった。
ラジワットが、かなり慌てた様子で階段を上がって来ると、ノックも雑に幸の部屋に入ってくる。
そして、驚いた表情で、幸にこう言うのである。
「ミユキ、、、マリトが君に、大変な事をしてしまったようだ、、、、父親として、一体なんと詫びたら良いか」
ん?、、、え?、、、何ですか?、、そんなお詫びが必要なことなんて、私、、、、え?、なに?。
「ラジワットさん、落ち着いてください、私、マリトちゃんに、何もされていませんから、、、、何ですか?」
ラジワットは、いつになく動揺しているように見えた。
マリトが、一体何を言えば、このような表情になると言うのか、こうなると逆にその正体が気になって仕方がない。
「ミユキ、、、、その、、、体は、大丈夫なのか?、、、まさか、息子に先を越されるなんて、、、」
はい?、、、いや、だから、、、、なんですか!、もう、ちょっと、怖いんですけど!。
先を越された、って、ラジワットさんも、同じことをしようとしていたんですか?、、、、いや、ちょっ、本当に怖いんですけど!。
「体、、、?、私、何でもありませんけど、、、、マリトちゃん、お父さんに、何を言ったの?」
マリトは、更に小さくなって、もう死にそうなほどに落ち込んでいた。
だから、、、、なによ!。
「ごめんなさい、僕、ミユキお姉ちゃんに、とんでも無いことをしてしまいました、、、、、」
「マリトちゃん、もう少し解りやすく説明して、お姉ちゃん、ちょっと解らないよ」
すると、マリトはもう目にいっぱいの涙を堪えて、その先が言えなくなってしまった。
代わりにラジワットが、重い口を開く。
「ミユキ、マリトが、君に、子供が出来るような事をしたと、さっき私に告白してきた、、、、これは、、父親として、なんと詫びたら良いか、、、」
、、、、、、、えーーーーーーー!、してない!、してない!、なんですか、それ!。
一体、マリトちゃんは、何を勘違いしている?。
え、え、え、まさか、マリトちゃん、私が寝ている隙に、なにかした?
、、、、、ちょ、、ちょっと!、怖い、それは怖過ぎ!!、ああ、もう、今すぐ確認したい!、え?、確認?、何を、、、、どこを?!。
「マリトちゃん、、、、、私、、、覚えがないんだけど、、、それって、、、、いつの事?」
幸は、恐るおそる、その事実を確認した。
いや、まさかと思うが、一緒に寝ている間に、何かされていて、本当に妊娠でもしていたら、さすがに、、、、、ねえ!。
「あの、、、あのね、、、僕、お姉ちゃんとお風呂に入った時に、、、、したでしょ」
ラジワットが、手を顔に当てながら天を仰ぐ。
ちょっと、ちょっと、待ってよ、何もしてないでしょ!、ラジワットさんも、そんな絶望のポーズ、キメないで!
「マリトちゃん、、、、私たち、お風呂で何もしていないわよね、、、ほら、ラジワットさんが、、、、もう、大変な事になっているから、しっかりお話しましょう、ね!」
そして、半泣きのマリトが、ようやく事の顛末を説明し出すのである。
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