第50話 不思議なパーティ

 二人と一匹の旅は、タタリア山脈を越えた後も順調に続いた。

 やはり山脈の北側に位置する土地は、肥沃とは言い難く、砂漠地帯に近い広陵とした大地に出来た質素な道を、ひたすら歩き続けるというものに変化していた。

 幸にいとってみれば、とても遠くに来た事を印象付ける景色であり、これまでの村の風景とは全く異なる世界である。


 村から次の村までの距離は、人間が歩いて一日程度を要するほどに離れており、こうして思えばランカース村は、だいぶ都会とさえ思える。

 そして、タタリア山脈を越えて、一番の変化は、料理の味と言えた。

 とても薄味と言うか、大味と言うか、肉料理も味付けはシンプルな印象を受ける。

 それまで異世界に来てからの味覚は、とても美味しいと感じられたが、土地が痩せているせいか、この地域の人々は、基本が肉食でありながら、香辛料や塩が手に入りにくい環境なのか、それが料理の味に直結しているようだった。

 

 それでも、二人と一匹の旅では、ラジワットと幸が交代で料理をするので、土地の料理を食べる時以外は大きく変化は無かった。



 

 それは、山脈を越えて、既に一週間程度進んだ村での事だった。

 次の村が午後の早い時間に到着し、今日は少しゆっくり出来ると思っていた幸とラジワットに、小さな異変が起きていた。


「ミユキ、、、これから私が話す事に、一切口を挟んではいけないよ」


 久しく深刻な雰囲気で話すラジワット。

 前回は、山賊に襲われた時であっただろうか。

 つまり、それは再び二人に危険が迫っていると言うことを指す。


「やあ、これは可愛らしい凸凹なパーティだな、どこまで行くんだ?」


 話しかけてきたのは、20歳前後の快活そうな青年だった。

 後ろには、更に屈強な男性が一人、そして、とても綺麗な顔立ちの女性が二人。

 どうやらこの人たちは、パーティを組んでの旅のようだ。

 一体、自分たちに何の用件だろう、と幸は思った。

 その村に到着したばかりの自分たちを、まるで待っていたかのように、それは首尾良く準備されていたように幸には感じられた。


 4人のパーティは、この村に宿泊していて、もしまだ宿が決まっていないのなら、自分たちと一緒の宿に泊まらないか、という誘いを受けた。


 幸としては、それまでラジワットとの二人、と一匹旅に、初めて女性が加わるのでは、と少しだけ期待感があったが、それを補って余りあるほどに、二人の男は、、、男性だった。


 最初に話しかけてきた男、なんともイケイケな印象を受ける、やりたい事は力推しでなんでもやってしまうような、パワーを感じる。

 その後ろで、少しムッとしたように、いつも怒っているような筋肉質な男、彼もまた20歳前後だろうか。

 幸は、この二人の男たちのようなギラギラした感じが苦手に思えた。

 それにしても、この四人は容姿が整っている、そんな中でも、一番奥にいる白人系の女性、彼女だけ、なんとなく垢抜けていて、この村にも、いや、この世界とも、何となく合っていない印象を受けた。

 彼女は、この世界にあって、短髪の髪を卑屈になることなく「個性」だと周囲に胸を張ってアピールしているように見えた。

 それは、同じく短髪になって、その髪を卑屈に感じていた幸とは対照的で、それは格好良く、そして美しい女性だと感じた。

 それまで、男の子として気配を隠してきた幸から見ると、堂々と女性の魅力を周囲に振りまく二人の女性は、輝いて見えるのである。

 、、、盗賊に襲われたりは、しないのだろうか。


「失礼、貴方達は、、、南の方の方々とお見受けしたが」


「ご明察!、来た場所までお見通しであれば、行く場所もお見通しって、かな?」


 目の前の男は、何と言うか、日本で言う所の「チャラい男」とか「ヤンキー」のような印象を受けた、つまり、馴れ馴れしいのだ。


 それでも、ラジワットは彼らに対し、かなり慎重に、そして丁寧に対応しているように見えた。

 恐らく、ラジワットよりも大分年下なんだろうが、いつものラジワットであれば、相手が誰であれ、堂々と話しをするのに、今回は少しトーンが違うような気がしていた。


「マッシュ、こんな村の入口で立ち話も、そちらに失礼だろ、一旦、村の中に入ろうぜ」


 もう一人の男がそう言うと、まずはお近づきの印に、食事でもどうかと誘われた。

 あの二人目の男、機嫌が悪そうに見えるが、案外しっかりしているのだと幸は思った。


 こうして、初対面ながら二つのパーティは共に食事をするのである。

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