O.D.A 〜オジサン・ダンジョン・アドベンチャー “おじさんが異世界に放り込まれちゃっ譚”〜

雨司

第1章 不思議の国に迷い込んだおじさん①

「こんにちは~。」


 今日も今日とてハロワ、じゃなかったギルドに顔を出す。


 唐突で申し訳ないが、俺はどうやら異世界に来てしまったらしい。異世界と言っても知らない場所なんかじゃない。どう見ても現代の日本にしか見えないんだから。


 ギルドの前の道路には自動車が走っているし、みんなスマホを使ってる。ただ、ところどころ違和感を感じるのは俺のいた世界とは違うからで、まだ完璧にはこの世界に馴染んでない証拠です。


 これって異世界転生じゃなくて異世界転移って言うんだよね。よく知らないのだが。


 元いた世界に未練はあるが、戻る算段があるわけもなく、この世界で生きていくことになりました。


 んでもって生きていくためには仕事をしなきゃならないのだが、俺は前の世界の仕事を選ばなかった。普通だったら今までしていた仕事をしたほうが楽に生きられるんだけどね。でもまたサラリーマンなんてまっぴらごめんだ。


 二度目の人生ってことで、好きに生きることにしました。俺のことを誰も知らない世界で俺を縛るものは何もない、ってなもん。少し投げやりになってたのは否定しない。


 で、なったのが冒険者。


 この世界では冒険者と呼ばれる職業があって、俺はそれになったってわけ。


 そして今日も日銭を稼ぐべくギルドに赴いたわけなんだが、依頼が貼られている掲示板から受けたいクエストを探すのが日課です。


 デジタルが普及しているこの世界でも、ここでの仕事は掲示板から依頼票を取って受付に持って行くのがルールらしい。対面で問題ないかチェックしているらしい。そういう部分もやっぱり大事だよね、うんうん。


 アナログな部分が残っていてちょっと安心しているおじさんなのでした。


「えーっと、スライム駆除のクエストはっと、、、」


 ここ最近ずっとスライムの駆除を受けている。初めてスライムという文字を見た時は感激したよね。スライムがいるのかと。


 すぐにでもクエストを受けたかったけど、冒険者になるには初心者講習を受講しなきゃいけない。自動車免許の講習みたいにビデオを見て、武器の取り扱いなんかを一通り学んで、ようやく受けることが出来たのが一ヶ月前。


 その依頼票を引きちぎって、受付へと持って行く。


「こんにちは、これをお願いします。」


 そう言って俺は受付嬢へ渡した。依頼票を受け取った受付係は冷たい雰囲気のデキる若い女性なのだが、いつもこの人に当たってしまう。他にも可愛い受付の子達がいるが彼女たちは人気者なので、シゴデキ女性のところしか空いてないのだ。


 一ヶ月も経てば顔も覚えてくれているかもしれないが、素っ気ないことこの上なし。


「今日も良い天

「こちらのクエストですね。冒険者証をお出し下さい。」

「あ、はい。」


 さり気なく会話しようとしたのを遮られてしまった。まだ会話が成功した試しがない。心なしか軽蔑されてるようにも見えるが気のせいだよね。アラフォーおじさんがこんな日雇いの仕事して、しかもスライムなんて簡単なクエスト受けちゃってるからそんな態度してるとかじゃないよね。シュンとなりながらも気を取り直して冒険者証をかざす。


 「それではお気をつけて。」


 ツンっとした態度で送り出され、俺はギルドを出たのだった。


 ギルドで貸し出ししているスクーターに乗って沼地へ行く。今日のクエストは、常時依頼が出ているクエストで、近場のスライムが出現している場所に赴いて駆除するのだ。


 スライムは単為生殖するからか、すぐに分裂して増えるため、常にクエストとして依頼されている。町の公共事業みたいなものか。


 今日の場所に辿り着いた俺は、さっそくスライムを探す。ここは人気が少ない山あいなので、スライムが結構いると思う。


「いた。」


 バランスボールくらいの大きさの少し青みがかった個体だ。なんで青いのかは空や海が青いのと同じ理由だからだろう。


 近くにスライムがいたので、棍棒を持ってそうっと近づいた。俺はまだ駆け出し冒険者のため、剣などの攻撃力の高い武器を持つことを許されていないのだ。


 俺に気づいたスライムと対峙する。スライムは突進してくるので、それを避けて後ろからおもいきり叩きつける。


「それっ!」


 俺の実力ではまだ一撃では倒せない。二度三度避けては叩きを繰り返し、スライムが息絶える。


「イイ感じ。」


 よしよし、講習通りにちゃんと動けている。だんだんコンボも決まるようになってきて、効率よく倒せるようになってきた。


 スライムは動きがそんなに早くないから、落ち着いて対処すればそう難しいことはない。なんなら小学生でも倒せてしまうだろう。もちろん中には強いスライムもいるので油断は禁物だ。三匹程度なら慌てずに倒せるようになったのは成長を感じられて嬉しいところ。


 倒したスライムに近づいた俺は、スライムから核を取り出す。この核を持って帰るのだ。スライムだとビー玉くらいの大きさなのだが、強いモンスターになればなるほど大きくなるらしい。


ブヨブヨとまではいかないが弾性がある。これを専用の袋に保存する。そのままにすると形が崩れてしまうのだ。


 この世界では、モンスターを倒すと魔核と呼ばれるコアを手に入れることが出来る。このコアはこちらの世界ではエネルギー資源として使用する事が出来るらしい。それを元に技術発展している部分もあるから、この世界に違和感を感じているんだろうな。


 核を取り出されたスライムはドロドロに溶けて地面に吸われてなくなった。


 さて、どんどん行こう。今日のノルマは百匹の予定だ。




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