第5話 支援クラス
綾子さんは スクーターで通勤していた。濃い青色の原付のスクーターだ。真冬の雪が ちらつくほど寒い日でも綾子さん はスクーターで通勤していた。スクーターを買うまでは電車で通勤していた。電車だと とても 大回りになってしまって 1時間半ぐらいかかるので寒かったけれど スクーターを買った そうだ。
綾子さんは決して運動神経が悪いわけでもスクーターの運転が下手というわけでもなかったが、かなり細い道を来るので何度も転んだらしい。誰から聞いたわけでもないが 無傷だったスクーターが、時より傷ついているので きっと 転んだんだろうなと分かってしまう。綾子さんは綺麗な女の子なんだけれどもJR で回ってくると ずいぶん時間もかかってしまうし、交通費も馬鹿にならないのでスクーターで来ているらしい。きっと お父さんもお母さんも大事な娘が何度か 転びながら スクーター なんかで通勤するのには反対だったろうけれど通勤に2時間近くもかかってしまってはスクーターでの通勤を認めざるを得なかった。凍えるほど寒いような日でも綾子さんは スクーターで通勤していた。職場のみんなは この寒いのに頑張るわねと言って褒めていた。綾子さんは子供の面倒見が良かった。綾子さんは優しいばかりでなく子供たちのことをよく見てくれるので 保護者からの信頼も暑かった。さすがに小さい頃から お父さんの仕事を見てきただけのことはあった。知識でというより 綾子さんの場合は 障害のある子供たちの面倒の見方を体で覚えてきたという感じだった。僕は一度 綾子さんに聞いたことがあった。コロニーで結構大きな声を上げて騒いでいたりする子供たちを、支援学校の先生方が2人がかりで運んで行ったりしているのを見ながらなかなか大変な仕事だなと思った。僕はここへ来るまで 障害のある子供達をあまり見たことがなかったのでそうした光景は少し異常なかんじがしていた。これじゃ動物園だ。普通じゃなかった。子供達はすごく優しくて思いやりがある場合もあるが、やはり何かしら 体に障害があって支援学級に来ているので時として 奇妙な人として見られてしまう場合があった。そうしたことについて 僕は慣れていないので戸惑うことがあった。綾子さんにそれを言うと 子供の頃から 見慣れているから全然平気ですと言われてしまった。要するになれなのか。定年退職してパートタイマーでこの仕事をしている僕と比べ綾子さんはこの仕事をお父さんと同じように 本職にしようとしている。支援学校の先生というのは身分的には公立の高校の先生と同じことになるんだろう けれども大変な仕事だと思った。ただ普通の学校に通っている高校生たちも見た目は 分かりにくいけれども 内側にはいろいろ 奇妙なものを持っていて 支援学級の子たちはそうしたことが見ただけでわかるようになってしまっているだけだ。普通は目に見えない いびつな異常なものが 支援学級の子供たちは初めから外側に出ているだけだとも言えるかもしれない。人間なんてよく見たら気持ちの悪い 嫌なものなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます