少年
@reito_5
第1話
18歳。
親からの保護がなくなり大人として生きることを始める日。成人年齢は20歳から18歳に引き下げられ、法律上は大人になる。しかし、少年から青年になることで強くなることはなかった。寧ろ弱くなる一方だ。
すぐに溶けてしまいそうな淡い粉雪が黒で塗り潰したように暗い空に際立つ日。俺はたったひとり家を飛び出した。右手には鋭く尖った銀色に光る包丁を握り締めて。
駆け出した先に辿り着いた歩道橋。駆け上がった頂上で俺の右手に持つものを見て怯えたように潤ませた女の瞳をよく覚えている。小さく吐いた白い息。暗闇の中へあっという間に溶けた。じりじりと近寄ると真っ青な顔を硬直させ耳に当てた携帯電話を食い込むように強く握り締めたのが分かった。
電話口へ向けて伝えた、「助けて」という蚊の鳴くような微かな声を無視して腹を突き刺した。
重力のまま沈んでいく。女は階段の下へ転がっていった。積もり始めた白い雪を塗り潰すように生暖かく赤黒い鮮血が流れていく。その頃にはもう俺の白い息だけが闇へ溶け込んだ。
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