魔法少女クソダサ☆パーカー
月待 紫雲
妖精はスマートフォンとともに
カーテンを締め切って、昼なのに暗い部屋。そのベッドの上に置かれた箱にボクは思わず笑みをこぼした。
「グヘへ……」
箱の中身はスマートフォンだ。結構前に応募したゲーミングスマートフォンの懸賞が当たって今日、ボクの元に届いたのだ。
しかもスマートフォンで有名なミルキーウェイ社の最新鋭ハイスペックモデル。誰もが喉から手が出るほどほしいやつだ。
ディソーで揃えたスマートフォンをゲームコントローラーのようにできるカスタムパーツも揃えたし、操作もまるで据え置きゲームのようにできるだろう。ハイスペックスマートフォンならカクつきがちな高グラフィックも堪能できる。
うーん素晴らしい。
箱をささっと開けてメタリックレッドとブラックのカラーにSF映画に出てきそうなガジェット味あふれるデザインのスマートフォンが出てくる。男の子ならたまらないデザインなんだろうけど……うわ軽いし持ちやすい。
まぁデザインなんて変じゃなければなんでもいいか。
試しに電源ボタンを押してみると起動してくれた。よしよし、充電しながらセッティングするとしよう。
源真とかファンタジーオーパーツとかいろいろ引き継いで遊びまくるぞー。あと推しキャラの衣装違いが実装されるから絶対ガチャで引き当てて高画質で眺めまくってやる。
背面にある指紋認証の登録だとかSIMカードを古いスマホと差し替えたりして使えるようにしていく。顔認証もバッチリ。
ストアのログインも済ませて……っと。アプリをまとめてインストールする。
「……なにこれ」
目を細める。
明らかにインストールした覚えのないアプリがあった。可愛らしい猫のキャラクターが描かれたアイコンで、その下には「魔法少女」の文字がある。
アンインストールしよ。
長押しをする。
普通ならアプリの詳細やオプションが出るはずなのに、勝手に起動した。
「……は?」
唖然とするボクの眼前で、黒猫の顔が画面いっぱいに出てくる。
「はじめまして! ぼくは平たく説明すると妖精のビーキュウ! よろしくね! そしておめでとう! キミは魔法少女に選ばれました!」
…………新手のウイルス?
「もしもーし!
それは明らかに意思を持ってボクに話しかけていた。ウイルスのせいでどこかと通話が繋がってるとかだろうか。
だとしたら、怖い。
「な、なんでボクの名前……」
震える声で出せる精一杯がそれだった。
いやだって最新鋭ゲーミングスマートフォン(新品)にこんなブラウザクラッシュみたいなウイルスアプリつくことある?
目の前の現象に頭が追いつかない。
「いやスマートフォンに登録したじゃないかいろいろと」
「そ、それはそう……だけど」
「大丈夫。ぼく妖精だから個人情報は抜いてないから!」
ぽんっ、と軽い音を立ててスマホから白い煙が出たかと思うと、ボクの目の前には先程の猫のキャラクターがぬいぐるみのようにベッドの上に出現した。
「……え」
「ほら怪しいアプリじゃないよ?」
さも当たり前のように二本足で立ち、腰に手を当てる猫。
「悪いけど時間がないんだ。世界に危機が迫っている……スマホを持って外に出てほしい」
「あは、はは……は?」
現実離れした光景にボクはから笑いするしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます