2.
「うっそぉ!!!!」
昼休みの教室が震えるほどの大声でクラス中の視線を集めたのは駒田ユウコだ。
「ちょちょちょ、ちょっと見せなさいよ!」
両手で口を押さえながら
のぞきこむ手紙はユウコ宛のものではない。
「明日の放課後屋上に来てください。 待ってます。
もしいやだったらこの手紙は燃やしてください
2-B 稲垣シンゴ」
「アンタ稲垣クンのこと前からアレだったんじゃない?」
「う、うん、、、そうだけど」
下駄箱に手紙を発見したのは 2年D組 杉浦アミ。
高校一年のときから密かに想いを寄せていた相手が まさにこの手紙の差出人である稲垣シンゴであった。
ふたつ隣のクラスのイケメン男子からの突然な呼び出しは<燃やしてくれ>という指示で締めくくられている。つまり 場合によってはこんな手紙が残っていて欲しくないということだ。部活の誘いや何かであるワケがない。
「あのさ、聞いた話なんだけど、、」
ユウコのつかんだ情報によると、つい先日2年C組のとある女子がイケメン稲垣に告白した事案が発生したという。
その結果は定かではないが、このタイミングで稲垣からアミに告白したいことがあるのだとすれば、その狙いを推し量るのは難しくない。要は、第一希望のアミがダメなら2-C女子の提案を受け入れるということだろう。
こんなイケメン男子の思惑が手に取るように分かってしまうのが、ユウコの恐ろしいところだ。
彼女につけられたあだ名は「ブウコ」。ゴシップ雑誌『BUBKA(ブブカ)』がその由来である。
「ということは・・・
明日のチャンスを逃したら終わりってこと!?
えーー、どうしよう!?」
「え、何? なにか迷うことがあるっていうの?」
「そうじゃなくて、ちょっと用事が」
「用事ってアンタ、
これより優先する用事って何? 地球上にそんなの存在する?」
「だよね、、、、」
人生において またとないチャンスがいま手の中にある。
そんな状況で戸惑いの表情をみせる杉浦アミの「用事」とは?
それは決して誰にも言えないものであった。
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