初恋はまだまだ終わらない
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飲み物を買いに行こうと遠くへ離れていくポチの背中を見送りながら、アタシは大きく溜め息を吐いた。それはとても深い溜め息であり、周りから見たら疲れている様に見えるのかもしれない。
アタシは面白い話をしろって言ったのに、あんな話ばかりされていては疲れてしまう。……特に、他の女の子の話なんてされたら尚更だ。
「本当、駄目な馬鹿犬よね」
小さく呟くと同時にアタシは左手で自分の髪の毛に触り、手櫛でゆっくりと整えた。別にそれ程は崩れていないとは思うけど、何となくそうしたくなったからだ。
そうして整えていると、不意に髪を束ねているリボンに指が触れてしまい、それと同時にアイツの事を思い出して更に苛立ってしまう。
「……ひめちゃん、か」
小さく呟いて溜め息を吐くと、アタシはリボンの端を指で摘まみつつ顔を上げ、それから空を見上げた。上空には雲一つない綺麗な青空が広がっており、心地良い風を肌で感じた。
「全く……」
そしてアタシは摘まんでいたリボンをしゅっと引っ張ると、そのままリボンを解いた。それはするりと解けると摘まんだアタシの指から垂れ下がり、風に煽られてゆらゆらと揺れている。
アタシは風に揺られるリボン―――俗に言う可愛らしい感じの色をしたそれを見つめつつ、ポツリとこう呟いた。
「……気付きなさいよ、バーカ」
アタシのそんな小さな呟きは誰に聞かれる事の無いまま、青空の彼方へと消えていくのだった。
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