続々・女王様な彼女と奴隷の僕
「ねぇ、ポチ。あんたさー、なんでアタシが退屈しているか、わかる?」
「い、いえ……分かりません……」
昼休み。授業の合間にある昼休憩の最中。僕―――
一条さんは自分の金髪を人差し指でくるくるといじりながら、心底不満そうに溜め息を吐き出した。そして、苛立った表情のまま言葉を続ける。
「簡単よ、退屈だからに決まってるでしょう?」
「いや、それ理由になってないです……」
僕は思わずツッコミを入れてしまう。すると、彼女はキッと目を細めて僕を睨みながら尋ねてきた。
「あのねー、あんた、アタシに口答えするつもりな訳?」
「あ、いえ……そういうつもりでは……」
僕が苦笑いを浮かべながら答えると、一条さんはより不機嫌そうな表情を浮かべて言った。
「そもそもの話、アタシがこんな気分になっているのも、ポチが……つまり、あんたのせいだから!」
「は、はい……?」
急に声を荒げ始めた彼女に、僕は動揺しながらも首を傾げる。そんな僕の様子に痺れを切らしたのか、彼女は立ち上がると僕に近寄ってきた後、何故か僕の両頬を掴んできた。
「ふぎゅ!?」
変な声が出ると同時に、僕の頬が左右に引っ張られる感覚があった。そして目の前には一条さんの顔がドアップで映し出される。中身はとんでもない悪魔のくせに、外見だけは超がつくレベルの美少女である彼女。その端正な顔立ちやきめ細かな肌、さらりと揺れる金色の髪。悪魔だと分かっていても、それらの要素が至近距離にあるだけでも僕の鼓動は自然と高鳴ってしまった。くっ、悔しい……。
そんな僕の葛藤を余所に、一条さんはじぃっと僕を見つめてくる。そして彼女はまたもはぁと溜め息を吐き出す。一条さんの吐息が鼻に触れ、それだけで僕の顔は真っ赤になる。
「せっかくの昼休みなのに、ポチがつまらない話ばかりするから、有栖ちゃんは退屈なの!」
「そ、そんな事言われましても……」
僕が苦笑しながら返すと、彼女は舌打ちしながら僕から手を離した。そして腕組みすると、口を尖らせて僕に言う。
「大体何よ! 暇だから面白い話を聞かせなさいって言ったのに、どれもこれもちっとも面白くないじゃない! あんたさぁ、やる気あんの!?」
「うぐっ……すみません……」
彼女の鋭い指摘に何も言い返せない僕は俯いて謝罪する他なかった。……いや、しかし、待って欲しい。僕だって色々なネタを提供したんだよ?
例えば、この前の放課後に一つ上の先輩である広報部の
それと一昨日の休日にたまたま出掛けたゲームセンターにて、一個下の後輩である
他にも色々とあるけど、そのどれもこれもが面白くないなんて言われちゃったよ……流石に酷いよね……? そんな僕の気持ちには気付かず、一条さんは腕を組んで僕を睨みつけると、深い溜め息を吐き出して言う。
「……あー、もう仕方ないわね。じゃあ、ろくに人を楽しませる話しも出来ないポチの為に、有栖ちゃんからお題出してあげるから、それを基にして話してみなさい」
「ええっ!? さ、流石にそれは……」
急に投げやりな態度になった一条さんの言葉に、僕は思わず驚きの声を上げてしまう。何せ相手はあの一条さんなんだから。悪魔の様な彼女が一体何を僕に語らせるつもりだというのだろうか……。
「何? 嫌なの?」
そう聞き返してくる一条さんに、僕は言葉を詰まらせてしまう。ここで嫌です! なんて言ったらどうなるかわからないし、下手をすれば機嫌を損ねてしまった僕が何をされてしまうかわからないからだ。
うぅ、なんでこんな事に……そんな事を考えつつも、結局断れないまま「分かりましたよ……」と答える僕であった。
「えっと……それでですね、どんなお題について話せばいいんでしょうか?」
とりあえず一条さんの話の続きを促す様に話し掛けてみる。すると彼女は「う~ん」と少しだけ考えた後で口を開く。
「そうね……じゃあ、ポチの秘密について話してもらおうかしら♡」
「ぼ、僕の秘密……ですか!?」
予想外な内容に思わず驚いてしまった。この悪魔……僕のあられもない過去を暴いてやろうっていう魂胆だな!? そして自分だけで盛り上がって楽しむに決まっている!
「おやおや~? どうしたのかしらポチ? そんな冷や汗かいて焦っているみたいだけど?」
僕がワナワナと震える様子を見た一条さんは不敵な笑みを浮かべて見下ろしてきた。その余裕の表情からして、僕の方が劣勢に立ってしまっていると考えるべきなのだろうけど……ここで負ける訳にはいかないのだ!
「そ、そんな訳ないじゃないですか……!」
「本当に~? 強がってても良いけど、後で恥かくのはポチだよ~?」
一条さんが煽るように言ってくる。くぅ、なんか悔しい……! こうなったら、僕の恥ずかしい話を存分に語って彼女を出し抜いてやろう! そう決意した僕は緊張した面持ちで口を開く。
「それじゃあ……僕の初恋について話します!」
「へ?」
僕の反応が予想外だったのか、一条さんはキョトンとした顔で聞き返してきた。それに対して僕はニヤリと笑みを浮かべると続けて説明するのだった。
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