魔導鋼騎 エフリード
駒井 ウヤマ
第1節
序話 An agreement
なに、『契約』について聞きたいだと?
どうした藪から棒に。俺が結んだ契約の内容なんて、お前の知ったことじゃないだろうに・・・なに、違う?
帝国で無し、俺とアイツとの間での契約だと?
何の・・・ああ、あったあった。あったが・・・それって、お前が加わって直ぐに言わなくなった話だと思うんだが、何故に今更そんなことを?
「いえいえ。そう言やあ聞きそびれてやしたからねえ」
まあ・・・そう言えばそうだな。言わなくなったのもそうだが、そもそもが別に説明してやる義理も義務も無かったし・・・なに、薄情?
おいおい、人聞きの悪いことを言うな。それに、自分の胸に手を当てて思い出して見ろ。あの時のお前、どう贔屓目に見ても胡散臭いことこの上なかったぞ?
「へへ、それを言われりゃヨワい。・・・で?」
身を乗り出すな。そこまでして聞きたいのか、まったく。
まあ良いか。生憎と暇を持て余しているのは確かだし、所詮はもう済んだ話だしな・・・ん、まあいいだろう。説明してやるが、茶化すなよ?大人しく聞けよ?
頷いたな、良し。
あれは今から・・・何ヶ月経つんだか。まあ、俺がこの地の来た時の話だから、少なくともお前と遭うよりは2週間は前の話だな。
「契約?」
俺にとって、その言葉について思い出すのはいつも、俺が鸚鵡返しに発したその言葉からだ。よく覚えてるなって?あのなあ・・・忘れる訳ないだろうが。
茶々を入れるなと言ったろうに・・・まあいい、話を戻すぞ。
「ああ、契約さ。キミとボクの」
記憶の中での俺は・・・初めてと驚きの連続で、精神も体もクタクタに疲れ果てた状態だった。そう言ってきたアイツも同じように疲れていたはずだったのに、何故だかアイツはやたらと元気そうだった気がする。ランナーズハイか、アドレナリンでも出まくっていたんだろうか。
ま、どうでもいいな、それは。
「俺と・・・お前?」
「そう。それに・・・キミみたいな風来坊に、僕の大切な家族を預けるんだ。キッチリとしておくことが、間違っているかい?」
「・・・いや」
フルフルと首を振る俺は、どんな顔をしていたのだろう。少なくとも、アイツほど元気な表情ではなかっただろうが。
「それで、どんな?」
繰り返して言うが、あの時の俺は疲れ果てていた。初めて命を賭けた戦闘をこなして身も心も鉛のように重く、小難しい話なんて放り捨てて一刻も早くベッドに倒れ込みたかったはずだ。
そんな状態と俺を見越してあんな話をしたのだとすれば、アイツはいい詐欺師になれるだろうよ。ま、そんな職につけるような性根には、それこそ逆立ちしたって成れんだろうけどな。
「何、簡単さ。君は、元の世界に帰りたいんだろう?」
答える為に口を開くことも億劫で、俺はただ呻き声と共に頷いた。「あぁ」だったか「うぅ」だったか、それはまあ、本題じゃない。お前もどうでも良いだろう?
大事なのは、俺が同意の意を示したこと。そして、アイツがそれに満足そうに頷いたこと。・・・あー、満足そう、と言うのは俺の主観だ。後で問い質した訳じゃないから信用するなよ、良いな?
「よおし、じゃあ契約としよう。僕はこの子、エフリードを見知らぬ誰かに渡すことはしたくないんだ。だから・・・君がエフリードに乗って。それで君はこの世界で生きていけるし、帰る術を探すことも出来るだろ?」
今、こうして思い返してみれば、ロクな契約じゃ無い・・・と言うより、契約の体を成してないな、コレ。
もっとも、あの時の俺にそんなことを指摘する元気は無かったがな。何故って・・・疲れ果ててたって言ったばかりだろうが。他意?ないない。
「そんなところかな。一緒にいるキミが乗ってくれれば、ボクも安心してられるからね。・・・ボクが
どうかな?とこちらを覗きこむその眼は、何故かフルフルと揺れ、しっとりと濡れていたような気がする。・・・いや、してなかったことにしておこう、後が怖い。
「ああ、分かった」
だから、俺も難しいことは考えずにそう応えたはずだ。そんな気力も無かったしな。
「本当かい!?」
「ああ。結んでやろう、その契約とやらを」
とまあ、こんなところだ。
そこから先は・・・駄目だ、思い出せん。誤魔化してなんかない、本当に覚えてないんだ。
ただ・・・アイツが飛び上がって喜んで、俺の手をとってブンブン振って・・・ああ、駄目だ。うっすらとでも覚えているのはそこまでだ。悪いな、面白い話じゃなくて。
「いいえ、十分で」
そうか、ならいい。それより、お前の・・・どうした、急に立ち上がって?なに、胸やけがするって?どういうことだ・・・って、おい!自分の話になったからって、立ち去ろうとするんじゃない!
待て、俺の話はまだ終わって・・・チッ、逃げやがったな、まったく。
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