最弱ゴブリンに転生した僕はレベル999の魔女に拾われました。強制成長させられ、魔王になります。

白鷺雨月

第1話転生したのは最弱モンスター

 僕の名前は五分鈴多いつわけりんたという。年齢は二十八歳で職業はとあるビルの警備員をしている。

 目が大きくて、背が低いので学生時代はゴブリンなんて不名誉なあだ名をつけられていた。思い出したくもない過去だ。

 もちろん、こんな見た目だから彼女なんていたことはない。当たり前に童貞だ。

 数少ない休日はアニメを見たり、ゲームをしたりするいわゆるオタクである。


 そんな僕にも憧れの女性がいる。

 それは僕が勤めるビルにはいる企業の女子社員で名前を下村しもむら彩花さやかという人だ。

 小柄で巨乳、ポニーテールがよく似合う女性だ。顔立ちはどこか猫を連想させる可愛らしさがある。今年、大学を卒業し、その企業に入社したようだ。


「警備員さん、おはようございます」

 その日も明るく、彼女は挨拶してくれる。

 警備員なんて無視されるのが当たり前なので、挨拶されるだけで好きになってしまう。


「おはようございます」

 僕もそう挨拶する。


 ビルに入る社員さんたちすべてに挨拶しているのだが、返してくれるのは下村さんをはじめとした数人だけだ。

 僕たちは置物じゃないんだけどね。

 ひどい時には挨拶がうるさいなんてむちゃくちゃなクレームを受けたこともある。


 僕は元気に挨拶してくれた下村さんを見送る。ふりふりと揺れるポニーテールがとてもキュートだ。

 そんな彼女を見送ったあと、僕の視界にとある男性が視界に入る。

 その男はパーカーのフードを深くかぶり、ビルに入ろうとする。

 明らかに不審者で、当たり前のように入館証なんかはつけていない。

 僕はその男性を制止する。

「何か御用ですか?」

 来客者なら受付で正規の手続きをとってもらわないといけない。

 見るからにそうは思えないけど。


「彩花、彩花、彩花……」

 その男は下村さんの名前を何度も呟いている。目が完全にイッてしまっている。

僕の制止を振り切り、その男性はビルに入ろうとする。

 それを見かけた先輩が駆け寄る。

 手にはすでに警棒が握られている。

 頼れる先輩だ。

 でも、時すでに遅かった。

 僕の腹部に熱い衝撃が走る。

 恐る恐る僕は自分の下腹部を見る。

 そこにはサバイバルナイフが突き立てられていた。

 さらに不審者の男性は僕に何度もそのサバイバルナイフを突き刺す。血が噴水のように吹き出す。

 そこで意識が途切れた。



 次に目を冷ました時、僕の視界にはいったのは粗末な小屋が並ぶ集落であった。

手を見るとその皮膚は深緑色で、黄色い爪は長く延びている。

 顔の肌を触るとがさがさで感触が悪すぎる。

 近くに小川があったので、その水面に写る顔を確認する。

 そこに写っているのはゲームなんかでよく見かけるゴブリンだった。

 どうやら僕はゲームによっては最弱と呼ばれるゴブリンに転生してしまったようだ。


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