外伝 今川家採用面接! 反省会
天文十八年三月某日 午後 場所:駿河国 駿府城[1]
臨済寺での面会が終わり、義元と雪斎と忠胤は駿府城に戻っていた。
忠胤「実は帰りがけに、あの者がこう申しておりました。
『ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき』と」
(この先も生きながらえるならば、今のつらいことなども懐かしく思い出されるのだろうか。昔は辛いと思っていたことが、今では懐かしく思い出されるのだから。)
雪斎「ふむ。新古今の和歌集の
義元「ふとした時に、歌を思い出すことが出来るのも才能かもしれんな」
雪斎「おや、悔やんでおられますかな?」
義元「いや、奴らは採用しないと決めたのだ!」
雪斎「そうやって失敗を認められないのは悪い癖ですな」
義元「う、うるさい!それより岡崎城の様子はどうじゃ?」
忠胤「飯尾からの報告では、このところ
義元は扇でパチンと手のひらを叩く。
義元「これは、吉良が動いてくれたな」
雪斎「はい。
義元「雪斎禅師、岡崎城へ軍を率いて向かってくれるか?松平勢は抵抗しないでしょうが、もしやすると、織田が動くかもしれませぬ。しばらく織田の動向をそのまま見張ってくだされ。忠胤も補佐に入れ」
「「ははっ」」
雪斎と忠胤が下がると義元は、西の方角を眺めた。
「これで三河も手中に……か」
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同刻 駿府城下
律「もうこうなれば、ヤケよ!……ヤケ酒よ!」
京四郎「落ち着けって、志望は武田か北条なんだろ?」
律「そりゃそうだけど……。なんか受からないと受からないで腹立つのよ!」
ひとまず、酒屋に入った。
別に本当に酒が目的なのではなく、戦国時代にレストランやカフェなんてオシャレなものは無いのだ。
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[1]駿府城:静岡市にある城。城と言いつつ、今川家時代なので館の要素が強い。
[2]藤原清輔:平安時代末期の公家。律が暗記していた短歌は、百人一首に選ばれている物。
[3]松平広忠:徳川家康パパ。10歳で父親を亡くして、伊勢まで逃れたりと苦労人だった。
[4]吉良義昭:三河の武将。吉良家は家柄が今川家より上だが、弱小勢力だった。
[5]吉良義安:義昭の兄。忠臣蔵でお馴染み吉良上野介こと義央は子孫。
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