0-1-3 第3話 発見!第一現地人
????年??月??日 場所:どこかの林
視点:京四郎 Position
律はまだ長々とスマホで坂本と話している。
高×信の本がどうだとか、大好きなレッサーパンダのぬいぐるみを大切にしてくれだとか。
男の俺にはわからない女子の事情ってやつだろうか?
待っていても仕方ないので、取りあえず周囲を散策してみる。
この林の木はよくある杉の木だ。珍しくはない。
たぶんここは日本なのだろうな。それはわかる。
ギリギリ律が見える範囲を歩いていると、
京四郎「うぉっと……」
足元につまづいてしまった。よそ見は良くない。
京四郎「うぎゃあああああああああああああああああああああ」
自分でも驚くくらいの大絶叫をしてしまった。
転んだ目の前に死体があったのだ。妹なら鑑識ごっこを始めるだろうが、こっちは心臓バックバクだ。
近くの木の裏に死体がもう二つ。衣装を見るに武家の格好のようだ。
三人とも刀傷があり、何者かに襲われたのだろう。
周りに人の気配はない。もし襲撃者がいれば、俺たちも無事だったかわからない。
やがて腰の日本刀に目が行く。おそらく刀を抜く間もなく斬り殺されたのだろう。
悪いと思いつつも刀に手を伸ばす。冷たい。
初めて持った日本刀は重かった。武士ってこれを振り回していたのか。
……二刀流の宮本武蔵は、化け物か?
たぶん、この時代には銃刀法はないので持ってもセーフ。令和に持ち帰れないけど。
ついでに懐の硬貨も頂く。褒められたことではないが、生き抜くのが先決だ。
ゲームとかでもしっかり回収するタイプだけあって見過ごせなかった。
永楽…宝?字がかすれていて読めない銅貨が何枚かあった。いわゆる銅銭ってやつだ。
日本史の教科書で見たことがある。
律の分の日本刀も盗んだ。アイツは歴史好きが乗じて剣道の腕前はプロ級だ。
正直、俺より上手く使いこなせるだろう。
律のところに戻ろう。
さすがに長電話は終わったようだ。
京四郎「ほいよ」
さっきの日本刀のうち、見た目がそれほどでもない方を渡す。
律「何よコレ!」
京四郎「二本の日本刀~」
律「……」
渾身のギャグは不発だ。
律「そうじゃなくて、どこから拾って来たのよ!」
京四郎「ああ、ちょっとそこのご遺体から拝借して……」
律「それ、泥棒じゃない!」
ごもっとも。
京四郎「でも確か、戦国時代の農民って戦場の死体の日本刀や甲冑を売りさばいたって……」
律「アンタ、そういうことだけ詳しいわね……」
律は眉間にしわを寄せる。
やはり罪悪感があるようで、律は遺体に手を合わせてから旅立つことにした。
京四郎「それでこれから一体どうするんだ?」
律「
京四郎「とすると、やっぱり織田信長に仕えて立身出世?」
律「それはイヤ。アタシ、信長とか家康嫌いなのよね」
歴史オタクだからこそのこだわりってやつか?わかるようなわからないような。
律「でも最初っから攻略チャートがわかっているゲームはつまらないでしょう?」
京四郎「それもそうだな」
律はクスッと笑った。
扱いやすいヤツとか思っているのかもしれないが、それだけ付き合いも長いのだ。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
[1]永楽通宝:中国の王朝の明で使われていた銅銭。明の最盛期の永楽帝の名前を冠しており、日明貿易や密貿易によって日本に流入していた。
織田信長が旗印[2]に使ったことで有名。
[2]旗印:武将が自分の居場所を示すために使われた旗。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます