13

 代表と私達は建物の中に戻り、今度は通路を通って地下へと向かった。

先ほどの広間とは打って変わって不気味な雰囲気が漂っていた。

まるで洞窟の中にいるようだった。


白鳥代表は私の手を引いて歩いていくのだが、私は怖くて仕方がなかった。

これから何が起こるのか全く想像できなかったからだ。不安な気持ちを抱えたまま歩いていると、ふいに彼が立ち止まった。目の前には大きな扉があった。

 彼は鍵を使って開けると、その先へ私を誘うように手を伸ばす。

私は恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。そこには大きな機械が並んでいた。白鳥代表はその機械の裏側に回り込み操作を始めたようだ。

しばらくすると轟音が鳴り響き始めたかと思うと部屋全体が揺れ始める。

私は驚いて周囲を見回した。

すると、天井の一部が開いていき大きな空間が広がっていく。

その向こうには星々が輝いて見えたのだ。思わず、感嘆の溜息を漏らした。

代表はそんな私を見て優しく微笑んでいるのだった。

まるで、宇宙の中に漂っているかのような錯覚を覚えてしまうほど美しい光景。

「どうだい?綺麗だろう?」その問いかけに私は頷いた。

「さぁ、もっと近くで見てみようじゃないか」

「リブ、お願い」

 指示を出し、彼の元へ寄る。

「僕はね、星々を巡る旅をしたいんだよ」

胸元のロケットペンダントを彼は手に取る。その蓋を開くと、そこには息子が写っていた。

 それからしばらく、白鳥は写真を眺めていた。

時折、指でなぞりながら何かを呟いている。そして、最後には蓋を閉じると大事そうにポケットへしまってしまった。

「それで、どうして私をここへ?」私は尋ねると、

彼はニヤリと笑って言った。「君が力を持っているからさ」

その言葉を聞いて私は首を傾げるしかなかった。

私が力を持っている?一体どういうことなのだろう?私には全く意味が分からなかったけれど、白鳥代表は気にすることなく続けた。

「君のその力を使って僕に協力して欲しいんだ」

私は混乱していたが、それでも必死に考えようとした。

しかし、何を求められているのかすら分からなかった。

そんな私の様子を見て察したのか、白鳥代表は続ける。

「君は知っているか?天引現象には軌道があることを」

そう言って彼は再び私の手を取ったのだった。

「君たちは皆、同じところに向かっているのだよ」と言って優しく微笑んだ彼の顔はどこか不気味だった。

「私は何をすればいいんですか?」そう尋ねると彼は答えた。

「簡単だよ。あれに乗るだけでいいんだ」

 ますます意味が分からなかった。ロケット?宇宙に行くってこと?疑問が次々と浮かんでくる。でも、白鳥代表はそんな私にお構いなく話を続けたのだ。

「古き血縁の君にも協力して欲しいんだ」

 そう言って彼は私に頭を下げたのだった。突然のことに驚いてしまい、私は固まってしまった。

「えっと、あの、その」言葉が上手く出てこなかった。

白鳥代表は真剣な眼差しで私を見ている。

「もし、断ったら?」と私は恐る恐る尋ねた。すると彼は少し悩んだ様子を見せた後、こう答えたのだ。

「そうだね、それなら仕方ないね」と言って引き下がったのだが、それは本心ではないことは明らかだった。彼は私を逃さないだろう。

「君は自分の立場が分かっているのかい?」

そう言って彼は私の手を掴むと強く握りしめてきた。

その目には狂気にも似た感情が見え隠れしているように思えた。

私は恐怖で身体が震えるのを抑えられなかった。

「さあ、行こうか」そう言って彼は私の手を引いて歩き出した。

必死に抵抗したものの、彼の力には敵わなかった。私は彼に引っ張られるままについて行くしかなかった。

 咄嗟に名前を呼んでしまう。私は慌てて口を塞ぐも、もう遅かった。

「ああ、そうか。この犬か」

 そう言って彼は微笑むと、今度はリブを強く抱きしめたのだ。

「大丈夫、君も一緒だよ」彼は優しく囁くように語りかけてきたのだった。

 その言葉を聞いた瞬間、私は絶望的な気持ちになった。

このまま連れて行かれてしまうのかという絶望感で頭がいっぱいになる中、それでも必死に抵抗を続けていたが、やがて力尽きて意識が遠のいていった。

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