ぼくはリザードマンではない

月鮫優花

ぼくはリザードマンではない

 ぼくはリザードマンではない。ただの「肌触りが人よりめちゃくちゃヘンな人間」だ。

 目の見えないきみが、ぼくの手を初めて握った時、リザードマンだと勘違いしただけだ。

 きみはゆめものがたりが好きで、リザードマンも、ゴブリンも、人魚も精霊も好きだ。

 だからきみは、あの時から毎日ぼくに会いにきてくれるようになった。

 手を何度も握って、ぼくのかたちを確かめた。興奮気味に色々な質問をしてきたり、そうじゃなくても色々なお話をしてくれた。

 嬉しかった。

 だってぼくの手を握って喜んでくれる人はきみだけだ。

 それにぼくにかまってくれるのもきみだけだ。

 ぼくはきみがすきだ。

 けど、繰り返しになるけど、きみは人間じゃないからぼくのことが好きなだけだ。きみがぼくの正体を知ってしまったら、つまらなくなる。

 だからぼくがリザードマンじゃない、というのは、きみには秘密だ。



 あいつはリザードマンじゃない。正体がどんなものかは正確には分からないけど、ゆめものがたりの仲間ではないらしい。

 だってあいつ、好きな食べ物がポテトチップスらしい。コンソメ味。それに新聞を読むのが趣味らしい。全然“らしく”ない。

 けど、毎日会いに行きたいって思う。

 手を握ったら握り返してくれた。話をしたら良く聞いてくれた。

 嬉しかった。

 手を握ってこんなに楽しいのは、あいつだけだ。

 こんなに熱心に話を聞いてくれるのは、あいつだけだ。

 繰り返しになるけど、あいつの正体がどんなものなのかは正確にはわかんない。けど、大事なのはあいつがあいつってことだ。

 あいつがリザードマンじゃないって知ってること、バラさなくてもいいよな。

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ぼくはリザードマンではない 月鮫優花 @tukisame-yuka

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