怪奇味噌人間
汐留ライス
本文
とある山奥の村を襲った恐ろしい味噌人間は、村の善良な人々をひとり残らず、物言わぬ味噌の塊に変えてしまった。
味噌人間は味噌になった村人たちを両の手でむんず、と掴むとヤヤヤヤヤヤと声をあげながらそれを食らい、排泄した。味噌を食った味噌人間の糞は当然ながら味噌であり、すなわち味噌は糞であり糞は味噌である。
味噌人間に排泄された糞はやがてヌヌヌと起き上がり、新たな味噌人間となってギヨギヨギヨと動き始める。こうして数刻前まで善良な人々が暮らしていた村は、今では幾体もの味噌人間たちがうごめく不吉な廃墟と成り果ててしまった。
やがて味噌人間たちは無人となった村を捨て、近くにある別の村へ襲いかかる。最初の味噌人間がどこで、どのようにして生まれたのか。それは限られた者だけが知る秘密であり、本稿で明かされることはない。
こうしていくつもの村をヤヤヤヤヤヤと滅ぼして一大勢力となった味噌人間たちは、ついに都へと進軍を始める。途中の村や集落を襲ってその数をさらに増やし、ついに都を隔てるのは川ひとつの距離にまで迫った。
迷うことなく川の中をザンブザンブと進んでいく味噌人間たち。川の流れに身体を溶かされても、動きを止めることはない。
しかし折しも振りだした激しい雨。味噌人間たちの身体は想定よりも早く溶けきり、川向こうの都へとたどり着くことなく流されていく。その様を見た都の者たちは、濁流はさながら味噌汁のようであったと語っている。
怪奇味噌人間 汐留ライス @ejurin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます