アントロギア。

古森もの

翡翠の少女


翡翠の少女が

長髪を涼ませる

その 川下に

一輪の花が 咲いた


私がそれを

摘み取り

彼女に見せる と

血色のよい

すべらかな舌は

一枚 また一枚

ていねい に

花弁をちぎっては

喉の奥へ しまい込む


刹那

心臓へ

頬の血潮 が

燃え移るのを

知覚 した


どくどく 

止まない

せせらぎは

驟雨の ようで

私は

血生臭い

世界の裏側 を

ざらついた感触

と ともに

垣間見た


花弁を

失くした

花は熱射病

に もがき苦しみ

工場廃水 のため

白魚は溺死した


だが 少女は

翡翠の四肢を

涼ませた ままでいる

そのあわいを

梳く

せせらぎが

花を咲かせることに

透明なまま で

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