ハリネズミのハリー第3話

@peacetohanage

第1話

おやつの三時前、ハリネズミのハリーはキッチンでアイスクリームを撹拌していました。

何と言っても今日のおすすめはアイスクリームです。

牛乳とハチミツを使ったシンプルなアイスクリームでしたが、そのアイスクリームには焼き立てのワッフルがおまけ付きでした。

ハリーが店先の窓ガラスを見やると、一人のお客が黒板を眺めています。

それはどうやら蝶のお姫様でした。

蝶のお姫様は首元のスカーフを風になびかせると、玄関扉を押し開けます。

カランコロン!


「やぁ!ハリー、アイスクリームを食べに来たわ」

「やぁ、蝶のお姫様!どうぞお好きな椅子に座って?」

すると蝶のお姫様は右から二番目の回転椅子に座りました。

「甘い香り!私の大好きなハチミツの香りだわ」

「その通り!僕のアイスクリームには、たっぷりハチミツが入っていますよ?」

蝶のお姫様は渦の巻いた自慢の触覚を、不思議に揺らします。

「ねぇ、アイスクリームはいつから食べられていたのかしら?」

ハリーは出来立てのアイスクリームをディッシャーで掬います。

「古代ギリシャから食べられていたそうだよ?当時は疲れを癒す健康食品と言われていたのさ」

「まぁ!当時からそうだったのね?アイスクリームを食べたら、間違い無く疲れは吹き飛ぶわ」

ハリーはアイスクリームのよそられたグラスに、さくさくのワッフルとスプーンを飾ります。

そうして蝶のお姫様が座る席まで、とげとげと急いで持ち運びました。

「はい、どうぞ!たんと召し上がれ」

「わぁ!素敵、ありがとう。いただきます」

蝶のお姫様がワッフルでアイスクリームを掬うと、一口目を頬張りました。

「ワッフルはね?その見た目から蜂の巣と言う意味のワーフェルが語源になっているのだよ」

「さっくさく!格子柄がまるで蜂の巣みたいだものね?」


蝶のお姫様はあっと言う間に、そう三時になる前にはアイスクリームとワッフルをたいらげてしまいました。

最後の一滴まで、スプーンで上手に掬い上げていましたよ?

じゃあね、ハリー!また来月来るわ。そう言って蝶のお姫様が通りに出払ってしまうと、ハリーはグラスを下げて、スプーンと一緒にぴかぴかに洗いました。

布巾で仕上げにきゅっきゅっと磨いていると、また新しいお客が黒板を眺めている事にも気付きました。

「さて、ハチミツをもう一瓶開けるかな?蝶のお姫様にはサービスしてしまったから、もう一度新しく撹拌をしないと」

カランコロン!

「やぁ、いらっしゃい!ようこそ、ハリーの小さなカフェへ」


おわり

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