シャドウ・エルミタージュ

@raia0304

第1話 「彼ら」との出会い

いつだって、私の前にあるのは暗闇だけで一緒に歩いてくれる人なんていないと、そう思っていた。



––––っおい!そこのお前!!やめろっ!

右肩が痛い。

呼吸がはやくなっているのは、階段駆け上がって来たからで肩を捕まれたからでは無い。


ねぇ、なんで逃げさせてくれないの。なんで。この人はこんなに苦しそうなの。

手を振り解き、下を見る。三日前まで一人で昼食を取っていたベンチと、隣のポプラの木が映った。

あともう少しで届くわ。

ポプラの木のてっぺんの明るい葉に手を伸ばす。



「やめろっつってんだよ!戻れよ!」

黒い暗いローブを身に纏った「彼」はぶっきらぼうに言葉を放った。

こういう時はもう少し優しく言ったほうが良いのに。

まるで他人事のように、考える。


どこから出てきたのか。彼の後ろにいた長い髪をお団子にした少女が、大きく口を開く。

「ここから落ちても両足骨折、良くて半身不随ですかね。やるならもっともーっと高い所にしないと。」


そんなの知らないわ。

上手いことベンチの角に頭をぶつければ良いだけだ。

私は、もう一度強く柵を握った。


「分からないのですか、、?では、しょうがないですね。」


前にいた彼の暗いローブの袖が、私の頭よりも高くなった。

その後、小さな音がして。




私は綺麗な花畑の中にいた。

さっきまでいた所とは全く違う景色が目の前にある。

駆け寄って来たお団子の少女が、鈴のような声で言った。

『ようこそ!私達のエルミタージュへ!』

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