第8話 番外編 1993年ロンドン再訪その1 フレディのお墓参りへ

 前回最後に書いた「QUEENと私の人生(仮)」、狭い拙宅ですので発掘作業を行えばすぐに見つかるはずだと思ったのですが、必死の作業も空しく発見に至ってはいません。


 もっと探そうかと思ったのですが、ありがたいことに思いのほか拙文をお読みいただけているようなので、発掘作業は続けるとして、番外編として、1993年のロンドン再訪のお話をさせていただこうかと思います。


 幸い1993年のロンドン旅行も旅行中に記録したメモノートが残っているので、そのメモや写真を元に、その一文中のロンドン再訪部分を、特に「フレディのお墓参り」の部分を中心に再現してみようと思います。


 フレディの死は衝撃的でした。すぐにロンドンに飛んだ日本のファンもいらっしゃったようですが、私はそれはかないませんでした。翌年の追悼コンサートも、ファンクラブ主催の鑑賞ツアーに申し込んだものの、仕事の都合上どうしても休みが取れず、直前に泣く泣くキャンセルしました。


 上司に頼み込めばよかったのでしょうが、嫌いな上司だったので頭を下げることがどうしてもイヤでした。今思えばつまらぬ意地を張ったものです。


 そしてようやく、1993年の1月に、ロンドンを再訪することができました。日程は1月15日から22日まで、お墓参りを行ったのは18日でした。前置きが長くなりましたが、以下が「再現文」です。


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 あるロック誌に、フレディのお墓はケンサル・グリーン墓地にあると書いてあった。ケンサル・グリーンはフレディの葬儀が行われ、荼毘に付された場所なので、信憑性はあると思う。今回の訪英は、ここへ行くのが最大の目的だ。


 ホテルを出て、地下鉄で墓地へ向かう。最寄り駅もケンサル・グリーンなのでわかりやすい。駅の向かいがすぐ墓地。お墓は墓地のなかのどこにあるのかはわからないが、フレディのお墓ともなればすぐにわかるだろう。


 普通に墓地に入れたので、あてずっぽうに墓地の中を歩く。イギリスでは土葬がまだ行われており、歩いているとところどころで埋葬されたばかりと思われるお墓に出くわす。


 歩いても歩いてもそれらしいお墓は見つからず、段々と古いお墓の区画になってきた。どんよりとした天気と相まって、鬱々とした気分になってくる。


 1時間ほど歩いたところで、そういう気分に耐えかね、また、お墓に眠っていらっしゃる方々の妨げにこれ以上なってもいけないと思い、墓地の事務所で尋ねることとした。


 そういう用事で訪れるファンが多いらしく、係の方は慣れた様子で「フレディはいったんここに埋葬されたのだけれど、ご両親がインドにお墓を移したのよ」と言って、1枚のガリ版刷りの紙をくれた。そこには、「ロックスターのフレディ・マーキュリーのメモリアルについては、下記に電話を」という文言が、ファンクラブの電話番号とともに書いてあった。(注:その紙がどうしても見つからない。絶対になくすはずはないのだが。)


 電話をといっても、そんな問い合わせを英語で行う自信はない。直接行くしかないが、幸い、ファンクラブは3年前に訪れたので場所はわかっている。3年前に再訪を誓った場所だが、当時はそんな用事でまた来るとは思ってもいなかった。


 46 Pembridge Roadのファンクラブのインターフォンを押す。日本から来たQUEENのファンであることを告げ、フレディのメモリアルプレイスはないか尋ねる。


 ところが、「今のところそういう場所はない」とのこと。そして、印象的だったのは「フレディは火葬に付されて灰になったので、お墓はない」と言われたこと。(注:「No tomb」というフレーズは30年経った今も忘れられない。)

 日本では火葬で灰、というか遺骨になってももちろんお墓に収める。イギリスではお墓とは土葬によるものだけで、火葬の場合はお墓は作らないのだろうかと、不思議な気分になる。


「祈念碑を作るという話はあるが、いつできるかわからない。なので、訪れるべき場所はないです」

 残念ながら、ファンクラブでは情報は得られなかった。ただ、訪れるべき場所はある。そう、フレディの家である。

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