平穏

第1話

人間というのは、わがままな生き物で、平穏なら刺激を望み、刺激的なら平穏を望む。

僕の生活は、いたって普通だ。

それが一番なのは、わかっている。

何事もない当たり前の生活が、一番なのだ。

とはいえ、さすがに時には、刺激的な事が起こってほしいのも事実。

だが、たいていの家庭は、普通なのだ。

なぜなら・・・

「ふたりとも、起床！」

その声に、おじいさんと幼女が顔をだす。

「なんじゃい。こんなに早く」

「私、もう少し寝ていたい」

おじいさんの名前は貧乏神。

幼女の名前は座敷童。

不幸を招く貧乏神と、幸運を招く座敷童。

この二人が、おのおのの家に共同生活をしている。

それでプラスマイナスのバランスが取れて、程よい生活が出来ているのだ。

しかし、気持ちにムラがあるのも事実。

バイオリズムというのか、座敷童のバイオリズムが高くなれば幸運が訪れ、

貧乏神のバイオリズムが高くなれば、不運が来る。

「じいさん」

「なんじゃい」

「今日の気分は？」

「４０かのう」

続いて座敷童に訊く。

「私は、６０かな」

となると、少しだけいいことがあるな。

楽しみだ。