さんたくブラックサンタ 4
話を聞くと、お姉さんーー大門サクラさんは、こうした超常現象や『怪談』を扱う警視庁の秘密チームの人らしい。しかもデスゲームを何度も生還しているとか。
「例えば、まず私がBを選んでプレゼントを確認し、中身の情報を共有します。当たりのプレゼントだった場合、次の人はそれをAで獲得。『死』か、次の人の『ほしいもの』だった場合、次の人はBで別のプレゼントの中身を確認します」
彼女の話を聞きながら、五十嵐さんは頷いた。
「なるほどな……ルール上、自分の『ほしいもの』か『死』を獲得しない限り、ゲームから抜けることはない。できるだけ多くの情報を確認したいなら、自分に関係ないものを選び続ければ良い。そうすれば、いずれすべてのプレゼントの情報が明らかになる」
大門さんは五十嵐さんの一人ごとに、少し笑顔を見せた。
「ええ。確率的には、ほぼ安全に全員がクリアできるはずです。これが『プレゼント交換』の『必勝法』……まあ、確率的にリスクが0ではないですが」
「そ、それなら私たち、無事に帰れるのね?」
集められた女性の一人がほっとした声をあげるが、となりの男性は渋い顔で反論する。
「でもよ……それって、見たプレゼントの中身を嘘ついてたらどうなるんだ?」
もっともな指摘だ。
「はい、もちろん。ただし、ここにいる皆さんに嘘をつく理由はないはず……ここから脱出したくない人はいないはずですからね」
「い、いや、俺はそういうつもりで言ったんじゃ」
男性は少し慌てた様子で遮ったが、大門さんは落ち着いたトーンで続けた。
「承知しています。あなた……お名前をうかがっても?」
「大塚だが」
「大塚さん。大塚さんのご指摘もごもっともです。この手のデスゲームは、全員が協力すればできるはずの『必勝法』が、何らかの要因によって実行できない……それに伴う参加者同士の諍いなんかを主催者が見て楽しむタイプのデスゲームなんです」
「な、なんだそりゃあ!?」
「デスゲームの主催なんて性格の悪いのばかりですから」
「はやく『プレゼント交換』を進めてもらえませんかネェ!!」
その間完全に無視されていた『ブラックサンタ』が、うんざりした調子で叫ぶが、サクラさんは一顧だにしない。
「『制限時間なし』はさっきあれが自分で言ったルールですから。気にしなくてよいです……さて。なぜ『必勝法』ができないのか、確認しましょうか」
「あ、あんた何する気だ」
大門さんがBを選ぼうとしていた時、何か裏がありそうな反応をしていたうちの一人が身構える。
「さきほどの説明でも、実際どういう動きをするのかわかりづらかったかと思いますし」
大門さんは、ぽんと手を打って、全員に笑いかけた。
「一回、デスなしでやってみましょうか」
「デスなしで」
五十嵐さんがオウム返しした。デスなしでってあるんだ。
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