さんたくブラックサンタ 2
そういうわけで、私たちは謎の『怪談空間』に引きずり込まれた。サンタの衣装のように赤い空間には、私たちを含め数人の男女がいた。さっきデパ地下で見た顔もあったので、おそらく周囲にいた人を『怪談空間』に引きずり込んだのだろう。
「HOHOHO……」
そしてその中心で、赤い空間に浮かんでいるのは同じく赤い服の『サンタさん』。服と白いヒゲはパブリックイメージのサンタそのものだが、目のあるべき部分には黒い穴がぽっかり空いていて、不気味だった。
「なんというか……赤いだけで何も無い『怪談空間』だな。初期のプレステのゲームみたいに解像度が低い。本物の『サンタさん』ならこんな精度にはならないはずだ」
五十嵐さんは若干期待外れそうな顔で、『サンタさん』らしきものを見ている。
「HOHOHO……ワタシは『ブラックサンタ』……」
名乗った『サンタさん』改め『ブラックサンタ』の服が赤から黒に変わる。よかった、赤い背景に赤い服は見づらかったんだ。
「ブラックサンタ?!なんだそりゃ!」
同じく『怪談空間』に囚われたらしい男性が声をあげると、『ブラックサンタ』はヒゲをまとった口をにやりと歪める。
「ミナサンもサンタからプレゼントをもらったことはありますよネェ……『いい子にしていないとサンタさんからプレゼントがもらえないよ!』なんて言われませんでしたカ?赤いサンタは良い子担当……ワタシ、『ブラックサンタ』は悪い子担当のサンタなんですネェ…」
「知らねえぞそんなの……」
五十嵐さんは胡乱な『ブラックサンタ』を睨みつけている。
「聞いたことがあります」
私の隣にいつのまにか立っていたお姉さんが呟く。
「知っているんですか?」
思わず聞き返すと、お姉さんは頷いた。仕事帰りのOLといった服装で、塩顔の美人だ。
「世界の各地には、良い子にプレゼントをもたらす『サンタクロース』と対になる存在、つまり悪い子に害をもたらすキャラクターがいると。場所によって内容や名前はまちまちで、ひどいところだと『プレゼントのかわりに動物の内臓が届く』とか、『悪い子は袋に入れて凍った川に投げ込まれる』とか」
「へえー」
「……失礼しました。あなたは随分落ち着いてますね」
お姉さんは私のことを不思議そうに見た。
「ええ、まあ。こういうの初めてじゃないんで」
「そうですか。すると、もしかして」
「いや、ちげえよ」
五十嵐さんが割り込んできた。
「俺たちはアマチュアの『怪談』マニアだ。あんたらの仕事をジャマしたりはしねえよ。いくぞ水田」
「え、ええー」
そして急にバツが悪そうに離れていくので、私はお姉さんと五十嵐さんを交互に見て、お姉さんに会釈してからあわてて彼の後を追った。
「なんなんですか五十嵐さん、感じ悪いですよ。知り合いですか?」
「俺が一方的に知ってるだけだ……そしてできればあまり関わりたくない」
「悪いヒトなんですか?前の霊能者みたいな」
「いや、全く逆だ」
五十嵐さんの態度は相変わらずよくわからない。落胆したような、バツが悪いような。例えるなら、こっそりやっていた悪戯を大人に見つかった子供のような顔だ。
でも、五十嵐さんを追及するより早く、『ブラックサンタ』が動いた。
「今日は悪い子のミナサンにもサンタクロースになってもらいますヨォ~ッ……クリスマスといえば『プレゼント交換』ですからネェ……ただし、悪い子へのプレゼントは『死』ですがネェ~ッッ!!」
◆ブラックサンタの『プレゼント交換』◆
◆プレイ人数◆
3人以上
◆用意するもの◆
プレゼント:各プレイヤーの「ほしいもの」を人数分+『死』を人数分
箱(開閉できるもの):人数分
◆ゲームの準備◆
「プレゼント」を用意し、箱にいれる。
一番最近プレゼントをもらったプレイヤーがスタートプレイヤーマーカーを持つ。
◆ルール◆
スタートプレイヤーマーカーを持っているプレイヤーから順に、時計回りで手番を行う。
プレイヤーは、自分の手番に、すでにプレゼントを獲得していない場合、プレゼントを1つ選んで、以下の3つの行動から1つ選んで行う。
※ただし、前の手番で行った行動を選ぶことはできない※
A:それを獲得する。
B:それの中身を確認し、スタートプレイヤーマーカーを持つ。
C:それの中身を確認し、まだプレゼントを獲得していない他のプレイヤー1人に、それを渡す。
Cの対象となったプレイヤーは、以下の3つの行動から1つ選んで行う。
C1:それを獲得する。
C2:それを返却する。手番のプレイヤーがそのプレゼントを獲得する。
C3:それの中身を確認し、手番のプレイヤーとすでにプレゼントを渡されたプレイヤー以外の、プレゼントを獲得していないプレイヤーに渡す。
全てのプレイヤーがプレゼントを獲得したら、プレゼントの中身を確認し、以下の処理を行う。
プレゼントが自分の「ほしいもの」だったプレイヤー:ゲームから抜ける。
プレゼントが自分の「ほしいもの」でなかったプレイヤー:ゲームを続ける。
プレゼントが『死』だったプレイヤー:死。
◆終了条件◆
以上の処理を、プレイヤー全員がゲームから抜ける、もしくは死ぬまで行う。
◆以上◆
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