【完結】おっさん、勇者パーティーから追放され女を寝取られて散々な目にあったけど元魔王から死霊術を使えるようにしてもらい最強になる
甲斐田悠人
第1話 おっさん、勇者パーティーから追放
「くっ……。さすがにドラゴンは手強いな」
森の中、俺達勇者パーティーはレッドドラゴンと対峙していた。
狙われているのは俺で、レッドドラゴンの爪を使った攻撃におされる。
盾を構えてはいるが到底防ぎきれない。
「ぐっ……」
レッドドラゴンとの力押しに敗れてふき飛ばされる。
木までぶつかり、背中を強く打つ。
構えた鋼の盾はへこんでおり、もうまともに機能しそうにない。
なんてこった。これじゃ使い物にならない。
「大丈夫ですか」
仲間の僧侶のルナが俺の元まで駆け寄ってすぐに治癒魔法を施してくれる。
こんな役立たずの俺の為にありがたい。
「大丈夫だ。これくらいなんてことはない」
強がってみるがレッドドラゴンを倒す手立ては見つからない。
へこんだ盾を手に再び立ち上がるもどうすればいいのやら。
剣は頑丈な鱗によって刃が肉まで届かないし、使える中級魔法だって通じやしない。万事休すだ。
「おっさん、どいてろ!」
叫び声を聞いて、すぐさま俺は邪魔にならないよう避けた。
この声は我らが勇者様だ。
そうか、勇者様の剣なら、あのレッドドラゴンも。
伝説の剣を構えた勇者アレックスが勢いよく飛び込んでくる。
レッドドラゴンの猛攻をかいくぐり、接近――。
アレックスは俺の苦労もなんのそのレッドドラゴンの首をあっさりと斬り落とした。さすがは勇者様だ。
対して俺は囮くらいにしかなれなかった。
いや、ここのところずっとそうだ。
魔王城に近づくにつれ、魔物はどんどん強くなっている。
でも、俺は……なにも変わっちゃいない。
むしろ歳をとってきて衰えてきている。
昔は凄腕冒険者として国に勇者パーティーに推薦されるほどだったのにな。
パーティー結成当時は頼りにされていた。
勇者からのおっさん呼びはその当時からだったが……頼りにはされていた。
仲間からの信頼も厚かった。
今は……残念ながら見る影もない。
だから、この後の展開は容易に想像がついた。
俺としても覚悟していた。
「おっさん、あんた使えないからクビ。今日限りでこのパーティーから荷物をまとめて出て行ってくれ」
レッドドラゴンとの戦闘の終わりに勇者からそう申告された。
ルナとセリアが思わず勇者の方を見る。
僧侶のルナは驚き、セリアは苦笑いを浮かべていた。
きっとセリアはわかっていたのだろう。
「ああ、なんとなく予想はついていたさ」
薄々気付いていた。俺はこのパーティーにとってお荷物であることに。
魔物たちはどんどん強くなっている。
その強さに俺はついていけそうにもない。
この決定は仕方ない。
受け入れるさ。
「セリア、一緒に行こう」
セリアは勇者パーティーの魔法使いで俺とは恋人の関係だ。
俺とは幼馴染で付き合いも長い。
当然、一緒に行くものだと思っていたが……。
「なに勘違いしているんだ、おっさん。出て行くのはお前一人だけだ」
「でも、セリアは……」
「セリアは”俺の”恋人だからな。おっさんとは一緒には行かない」
「なっ……」
俺は勇者様の言葉が信じられず、思わずセリアの方を見る。
セリアは俺から目をそらした。
そんないつの間に……。
「ごめんね。勇者様に迫られてつい、ね」
それがどういう意味かわからないほど俺は子供ではない。
つまりそういう関係になったってことだ。
俺の知らない間に……。
嘘だろ、セリア。
「ついって、そんな……俺にはしてくれなかったくせに」
「まっ。そういうことだからごめんね」
そうか、知らなかった。
いつの間にか、アレックスとセリアはそんな関係になっていたなんて……。
どうりで最近よそよそしくなっていたのか。
てっきり、俺は魔王を倒すまではイチャつかない方がいいと思っているからだとばかり……。
全部、俺の勘違いだったってわけか。
放心する俺をよそに勇者アレックスは言い放った。
「とにかく、おっさん。あんたはこのパーティーにはいらないんだよ。早く出て行ってくれよな。オレ達の邪魔だからさ」
「そんな、勇者様ひどすぎます」
これまで見ていただけだった僧侶のルナがついに口を出す。
ルナは明るくて仲間想いのいい子だ。
これまでの冒険でも俺をずっと気遣ってくれた。
その優しさに何度救われたかわからない。
今も俺は救われている。
「いいんだ、ルナ。俺は大人しく出ていくよ」
「でも……ギルさん」
「いいんだ、いいんだよ」
悔しいが俺は役立たずだ。
戦士としても、男としても。
だから、この結果はしょうがないのかもしれない。
荷物をまとめて、俺は勇者パーティーから出て行った。
ここにもう俺の居場所はない。
「くそっ、悔しいな」
一人、森の中でさまよいながら、俺は涙を流した。
今なら誰も見ていないから思う存分に泣ける。
悔しくて悔しくてしょうがなかった。
役立たずとしてパーティーから追放されたあげく、恋人まで寝取られる。
昔の俺はこんなんじゃなかった。
もっとみんなから頼られて、慕われていた。
でも今は……。
ここが俺の限界なのか。
これ以上は強くなれないのか。
もっともっと強くなりたい。
勇者よりも。
叶わない願いを抱きながら、俺は歩いた。
そうこうしているうちに、魔物と出くわした。
頭は牛の二足歩行の魔物。
ミノタウロスだ。
こんな時に厄介な。
剣を取り出し、構えた。
ミノタウロスは持っていた斧を振り回し、俺に攻撃してくる。
レッドドラゴンとの戦闘でへこんだ盾を構えながら、俺は後衛に指示を出す。
「セリア、魔法を!」
俺が盾になっている間にセリアが魔法を撃ってくれれば倒せるはずだ。
今までミノタウロスはこうやって倒してきた。
でも、俺は肝心なことを忘れていた。
今俺は一人で、後衛なんて誰もいないってことを。
ミノタウロスの斧が俺の首をめがけて振るわれる。
聞いたことのない音が首から聞こえてきて、俺の頭は地面に落ちた。
今日この日、俺は落命した。
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