#6 お出かけ 前編
今日は学校が始まって初めての休日。俺は自分の服を買いに電車で数分の場所にあるショッピングモールに来た。因みについでに柚にも買って欲しいものがあるからとお使いを頼まれてしまった。今までにつぎ込んでいたアニメグッズを辞めて、こういうものに使った方がベターだ。みんなと交流関係を持つと誓った上、服装がダサかったら、なんか不利になりそうだったのも理由の一つだ。
そのまま服屋に向かって歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえたきた。
「神里くん?」
「あれ? 大田さん。奇遇だね」
そこには茶髪ロングのクラスメイト、大田さんがいた。学校の時とは違くて、今は後ろで髪を結んでポニーテールにしている。
「買い物?」
「うん。新しい服買いに来たんだ」
「実は俺もなんだよね」
「じゃあ一緒に回らない? 男の人目線での感想聞きたいし」
「いいよ、俺もそうしたいし」
そして俺は大田さんと一緒に買いに行くこととなった。前はこんなイベントなかったので、自分の服を買いに出かけた俺に感謝したい。それに女子の同級生と出かけるのは初めてだから少しだけ緊張する。
「よく買い物とかいくのか?」
「うん。ショッピング好きだし。よく友達とも行くよ」
「俺はあんまり行かないけど、服が殆どサイズが合わなくなってきてたから、必要になったんだよね」
「なるほど……」
そのまま洋服屋に入り、お互いに試着したい服を選んだ。俺はネットで見た『高校生のメンズファッション』の記事にあった服を何枚か選んで、持ってきた。まだ彼女は……戻ってきてないか。
「ごめんね、待った?」
「全然。今戻ってきたところ。俺の方が服少ないし先に試着しとくよ」
「うん」
俺は試着室に入り、まずはセーターを着て下にジーパンを履いた。まだ春先だし、こういうのもありだろう。
「終わったよ? 変ではない?」
まあおそらくセンスが良さそうな服を選んだから変とは言われないと思うけど。
「うん。いいと思うよ。私から見たらかっこいいと思う」
「ありがとう」
その後もう二つの服も着て、どうか確かめてもらった。格好いいと高評価をもらった。彼女にそう言われるならおそらく大丈夫だろう。
「じゃあ着替えるから少し待っててね」
女子のコーデを見るのは、なんだか新鮮でワクワクするな。
「はい、どうかな?」
彼女は白いワンピースを着ていた。彼女の清楚さが白いワンピースと対比して、漫画に出てくる美少女みたいだった。
「似合ってるよ。漫画に出てきそうな感じがする」
「嬉しい。ありがとう」
そう言って彼女は微笑んだ。その表情はとても綺麗だった。
「じゃあ次着替えるね」
彼女は再び試着室に戻り、着替えた。興奮してる自分が情けない。平常心、平常心。
「これはどう?」
次に着ていたのは、クリーム色のワンピースに、サングラスを頭につけていた。いかにも『パリピ』って感じがするな。
「いいね。陽気な感じがするよ」
「そう? じゃあこれも候補にいれるね」
その後もカジュアル系やファンシー系などのファッションを批評した。俺が良さそうだと選んだ最初の二つを買うことにしたらしい。
「じゃあレジ行く?」
「ああ。そうだ……。大田さん、静かに……」
何故俺が音を立てないようにしたかと言うと、見たことのある女子が二人、店に入ってきたからだ。名前が思い出せないが……。
「あの二人は、同じクラスの七海と未来(ミライ)だよ。」
「誰だ……」
「関根さんと柴田さん」
ああ、最初のクラスで話してた人か。
「でも二人でいるところバレたらヤバくない?」
「結構まずいかも」
一緒にいることがバレたら、彼女達に情報を流されて、付き合ってるみたいな噂が流れる可能性がある。俺はいいが大田さんに悪い。
「ねえ、未来。今日はどんな服買うの?」
「うーん……。とりあえず可愛い服あったら試着して決めたいな〜」
「あたしもそうするつもりよ」
まずい、こっちに近づいてくる。
「仕方ない……。大田さん、ゴメン」
「え、何が、ヒャア」
俺は彼女を抱えて試着室に入り込んだ。隣の試着室は空いていなかった上、このまま逃げようにも逃げ道がなかったので、こうするしかなかった。
「神里君?? 恥ずかしいよ……」
「すまん、こうするしかなかった」
そこまで嫌がられてないのか? いや彼女が優しいだけだろう。それからすぐに外から声が聞こえてきた。
「アレ? 試着室二つとも埋まってるわよ」
「そうなの〜? 残念。また後でこよー」
二人は諦めたのか、そのまま足音が小さくなっていった。
ただ、二人が去った後も大田さんが俺からなかなか離れようとしなかった。
「大田さん、二人とも行ったみたいだよ」
「……」
「大田さん?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してた」
それから俺たちはすぐに試着室から出て、会計を済ませて外に出た。
「さっきはごめん、急に抱えたりして……」
「ううん、気にしないで、神里君が気づかれないようにしてくれたの知ってるから」
「ありがとう」
気にしてなさそうでよかった。
「時間も昼時だし、どこかで食べる?」
「うん」
そうして俺たちは店を探しに向かった。
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