こわいえいが
こわいえいが
少年は怖い映画を見た。
映画館で見たわけじゃない。
家のテレビで、夜やっていたテレビで見てしまっただけだ。
少年は恐怖していた。
映画で見た化け物に自分を襲われるではないかと。
かなり古い映画だ。
謎の生物が人に寄生して、寄生された人間は奇怪な怪物になり更なる被害を起こしていくというものだ。
古い映画だ。それでも少年は夜、一人では寝れなくなる。
自分の知らないところで家族が、両親が、姉が、その謎の生物に寄生されて、襲いかかって来るのではないか、そんな気がしてならなかった。
ちょっとした物音におびえ、布団の中で丸まっていた。
少年は布団の中で、なんであんな映画を見てしまったのだと、深く後悔していた。
そして、それはやってくる。
尿意だ。
少年は我慢するが、限界はすぐ来る。
布団の中から周りを確認する。
誰もいない薄暗い部屋だ。
頼りない常夜灯が薄暗い部屋を薄っすらと照らしている。
自分以外誰もいない。
物音もしない。
それでも少年は息を殺して、音を立てないようにベッドから起き上がる。
そして、まずは電灯から垂れている紐を掴み、それを何度か引く。
一度引くと電気が完全に消えて、もう一度引くと電気がついた。
少年は明るさに満足し、部屋の中を見渡す。
なんてことはない、ただの自分の部屋だ。
少年は自分の部屋のドアを音もなくゆっくりと開ける。
そこには真っ暗な廊下が続いている。
その先にトイレはある。
少年は廊下の電気のスイッチを入れる。
すぐに電気がつく。
夜の廊下は明るくてもどこか不気味だ。
静かで物音もなく、まるで何かが、映画で見た謎の生物が物陰に潜んでいるかのように思える。
少年はおっかなびっくり、廊下を進み、トイレまでたどり着き用を足す。
その後、少年は音も立てずに急いで自分の部屋まで逃げ帰る。
そして、自分の部屋のドアを音もなく閉めたその直後だ。
ガチャリと音を立てて、ドアを開ける音がする。
少年の部屋のドアではない。
少年は自分の部屋のドアに張り付いて息をひそめる。
パチンと電気を着ける音がする。
廊下を歩く音がする。
ガチャリとトイレのドアを開ける音がする。
少年はそれらの音を息をひそめて聞いていた。
やがて、その音の主は両親の部屋へと戻っていく。
恐らくは両親のどちらかがトレイに起きただけだろうが、今の少年にはそんなことは頭にない。
少年の頭の中にあるのは、両親ももうあの映画の様に奇妙な生物に寄生されてしまったのだと、そう確信してしまう。
次の日から、少年の戦いは始まってしまった。
両親のどちらかが謎の生物に寄生されてないか、それを探る戦いが。
少年が飽きるその日まで。
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