どあのむこう
どあのむこう
女は一軒家に一人で住んでいる。
親から受け継いだ家だ。
少し古い家だが住み慣れた家だ。
だが、女がこの家に一人で住むようになって久しい。
だからだろうか、女は度々人恋しくなる時がある。
その夜もそうだった。
寝る前にトイレに入り用を足している時だ。
ドアの向こう側から人の気配がする。
誰かがいる、そんな人の気配が確かに感じられる。
女は驚きと恐怖を同時に感じる。
当たり前だ。今はこの家に自分一人しか住んでいないのだから。
用を足し終えて、女がおっかなびっくりトイレのドアを開ける。
そこには、住み慣れた誰もいない静かな部屋が広がるばかりだ。
おっかなびっくり家の中を調べるが、誰かいた形跡はない。
女は気のせいだったのか、と思いその日はそれで終わる。
次の日だ、また女が寝る前に用を足すためにトイレに入っている時だ。
人の気配がする。
それどころか何かを話している声まで聞こえてくる。
今度は気のせいではない。
女は焦り出す。
複数人で泥棒でも入ってきたのかと。
きっと昨日は泥棒達が様子見に来てたのではないかと、そんなことを思いつく。
女はトイレのドアの先で話でいる内容を聞こうとして、聞き耳を立てる。
だけども、どうしても話している声はくぐもっていて話の内容までは聞き取れない。
女はトレイの中で震えていることしかできない。
だが、いつまでたってもドアの向こう側で何かを話すだけでそれ以外は何も起きない。
女も意を決めて、トイレのドアをひっそりと開ける。
その瞬間、今まで絶えることのなかった話し声がぴたりと消える。
そして、ドアの向こう側にはいつもの静寂の家があるだけだ。
家の中を見回るが、もちろん人がいた形跡など何もない。
女は唖然とする。
いったい何が起きているのかわからなかった。
それからも何度も似たようなことは起きた。
なので、女はトイレで用を足すとき、ドアを完全に締めないようにした。
それで、その怪現象は起きなくなった。
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