すわるもの
すわるもの
公園のベンチに何かが座っている。
誰か、ではない。
なにか、だ。
ただ、幽霊とか怪異とか、その類ではない。
いや、その類だったのかもしれない。
これはそんな話だ。
公園のベンチに人の様なものが数日間座り続けている。
子供達の間で噂になった。
ホームレスかなにかか、そう当初は思われていたが、どうもおかしい。
まず、それは微動だにしない。
黒いロングコートを着ているのだが、今は夏なのだ。
帽子も深くかぶっている。
髪の毛は長い。
肌はどこも見えないが、見える場所はひどくくすんだ灰色に思える。
そんなものが公園のベンチにもう三日も微動出せずに座っているのだ。
もしかしたら、ホームレスがベンチに座ったままこと切れてしまったのかもしれない。
そろそろ警察に通報されてもおかしくはない、そんなころだった。
付近の子供達が怖いもの見たさで、それに近づいたのだ。
そして、わかる。
それは灰色の肌をしているのではない。
新聞紙で作られていることに。
新聞紙で作られた人間大の人形で、それに黒い帽子とコート、カツラや靴までも着せているだけだと。
酷く手の込んだ悪戯だ。
種がわかれば、皆、そう思った。
そうなれば、子供達のおもちゃだ。
新聞紙と分かれば、徐々にだが、子供達はその人形を手を出すようになる。
最初こそ、おっかなびっくりであったが、本当に新聞紙でできた人形だと分かると、だんだん子供らも大胆に行動しだす。
その結果、その新聞紙でできた人形を解体しだしたのだ。
だが、それはすぐに子供達に後悔させることとなる。
新聞をいくつも巻いてその人形は作られていたのだが、その新聞紙と一緒に包まれるように大量の虫の死骸が挟まっていたのだ。
様々な種類の虫が、どれもこれも潰され、まるで押し花のように、潰された虫が挟まっていたのだ。それも大量にだ。
どの虫も既に死んではいたが、それで大部分の子供達は嫌なものを感じ逃げ出した。
だが、それでも人形の解体を止めなかった子供もいる。
最終的に、その子供は腕の一本を全て解体した。
そこで、出て来るのだ。
骨が。
新聞紙はすべてその骨を起点に巻き付けられていたのだ。
流石に残っていた子供達もそれで全員逃げ出し、それらの親から警察に通報され、人形は撤去された。
ついでに、その骨は人間の物ではなく、何かの動物の物ではないか。
警察からの話ではそう言う話だった。
けれども、人形が被っていたカツラ。
カツラの毛だけは人毛だったらしい。
ただ手の込んだ悪戯だったことは確かだ。
いやいや、悪戯だったのかも不明だ。
あの人形は手の込んだ呪物だったのではないだろうか?
真相だけはわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます