かたこり

かたこり

 男はそれまで肩こりとは無縁だった。

 だが、急に酷い肩こりに悩まされるようになる。

 肩が冷たく、硬くなり、男に重くのしかかる。

 肩こりのせいで体調が悪く、寝不足になり目のクマまでできて、顔もなぜか青白くなった気がする。


 また肩が妙に冷える。

 男が肩を触ると妙に冷たい。

 まるで冷水かのように冷たい。


 男はこれが加齢かと、そう思っていた。


 それを会社の同僚に話したところ、その同僚は引きつった顔をしていた。

 そして、その同僚はさんざん悩んだあげく、口を開く。


 あまりこういうことは言わないようにしているんですが、肩に手を乗せている女性がいますよ、と。


 男は驚く。

 振り返るがもちろん何もいない。

 男には何も見えない。

 ただ、この同僚はこんな冗談をいう奴ではないことを男は知っている。

 

 男は驚きはしたが、同僚に聞き返した。

 その女は美人か、と。


 今度は同僚が驚く。

 そして、困った顔をした後、男の背後を見る。

 人の形はしているが、同僚にとってそれは恐ろしい姿をしている。

 だが、見ようによっては美人といえなくもない。

 同僚の顔が青ざめながら、美人です、と男に告げる。


 男は、そうか、とだけ答えた。

 男は独身だった。

 いや、女性と付き合ったこともない男だった。


 次の日から男は妙に明るくなった。

 なぜだか、青白かった顔が血行が良くなっている。

 そして笑顔だった。


 同僚が話を聞くと、男は自分に憑いている霊に、幽霊ちゃんと名づけ色々と話かけたそうだ。

 話しているうちに、相手が美人だと思うと、男も楽しくなりずっと話しかけていたそうだ。

 自分の趣味のことを永遠と話していたそうだ。

 それが楽しくて、と男は笑顔で同僚に話した。


 同僚は男の背後を見る。

 そこにはもう何もいない。


 けど、男が楽しそうにしているので、同僚は何も言わないことにした。




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