第38話 魔力貯金的な奴
あの後イアさんのパーティーはみんな帰っていった。そしていつものようにたくさんの人の接客をして一日が終わった。ちなみに明日は冒険者学校だ。
「ねーねー! エントリーしに行こうよー!」
「んー……分かった」
銭湯を開いた後だから疲れ切っている体。少し気だるさをかんじながら人をダメにするクッションから起き上がる。
私はマギライアが開き始めた転移の魔法陣の上に立って、冒険者ギルドに転移した。
「すみませーん! 冒険者ランクマッチに出場したいんですけどいいですかー???」
テンション高めのライが私の手を引っ張り受付に連れて行く。私はもう……されるがまま。一度ネタを見つけたライは……もうだれにも止められない……。
「申し訳ありませんが、参加できるのは15歳からでして……」
あ……よ、よかったーこのままライに強制出場されるかと思った。
私がほっとしていると、ここで思わぬ言葉が私の後ろから聞こえた。
「いや、そいつらは出場させても問題ない。私が許可する」
私の後ろに円形に金色の髪が広がらせ、目をギラっと光らせているギルド長がいた。
そしてライは、ギルド長の発言にライが喜ぶ。
「え? いいの? やったー!」
……ギルド長さん?
「あのー……出場は15歳からっていうのは……」
「さっきも言っただろう……私が許可する」
ギルド長さん!? !?
もう終わってるよこのルール。頭の中のオールバックユキちゃんが「終わったわ」って言ってる……。
宇宙猫の顔になりながらライにエントリーさせられるのを眺める。しっかり決定してしまった。
「開催日は4月10日なので、8時になりましたらこちらにお越しください。ご武運を」
……やることになっちゃったー。やだー! その日はごろごろする予定だったのにー! ライー! 覚えてろよー!!!
その夜
「ふわー……やっぱり異世界の夜空は格別ですなー」
私は温泉に入りながら夜空を眺めていた。長野の高いところぐらいの夜空。いつ見てもきれいだなと感じることができる。
明日からまた冒険者学校だからなー。もうちょっとゆっくりしたかった……。
私はそう考えながらも湯舟からあがる。よくよく考えたら毎日温泉入ってるってとっても豪華だな……慣れって恐ろしい……。
お風呂が終わったので少し眠気が来るまでネットで小説を読む。最近読んでいるのはファンタジー小説だ。これだったら実際にいそうなモンスターを把握することができる。例えば……あ、「ウォルフ」だ。えーと? 見た目が……大神のようで、とっても狂暴。なるほど、えーと? ほかは……「トロール」。緑色の肌が特徴的。……それだけ?
などを私は銭湯の休憩室で読んでいると、いきなり、
ビュゥゥゥーーー!!!
と、大きな強風がこちらの迫ってくるのが音で分かった。
私は慌てながらも外を見る。うーん見ずらい! いったん外に出よう!
素早くサンダルを履いて外へ駆け抜ける。外には大きな竜……あの夢に出てきた竜が私を待っていた。
「……ええ……」
思わず困惑の声色で言ってしまう。竜は、恥ずかしそうな顔で私にこう言った。
『えっと……温泉が気になって来ました。少し迷惑だと思いますがよろしいでしょうか?』
……温泉が気になる竜……なんて前代未聞なんだ! いや、私も前代未聞のだったわ。
「大丈夫ですよー! ……少しスペースが狭いと思いますが……」
『大丈夫です……』
そう私に念話を送りながら竜は温泉に飛んで向かっていった。
そして私は「もう考えるのを本格的にやめる。もう何にも驚かないようにする」と、心の中で決心するのであった。
10分もすると竜がもう上がってきた。
『ありがとうございました。こちら、お礼の品です……』
と私に念話を送りながらどこからともなくアクアマリンのように光る不思議な石を私に渡してくれた。
じっと観察すると、なんとなく外側から中心へと力の波があるように見えた。
「ありがとうございます! えーと? これは」
『そちら、私の魔力が宿る魔石でございます。いざというときにそこから魔力を取り出しお使いくださいませ』
「なるほど。ありがとうございます!」
私が魔石について聞く前に、竜が答える。とっても便利だな! これ魔力貯金とかで出来そう!
そう考えがまとまり、思わず龍様に作り方を丁寧語で聞く。
「もしよかったら私に魔石の作り方を教えてくれますか?」
『え??? だ、大丈夫ですが、人間が魔石を作るのは前代未聞ですよ?』
予想外の回答。そこに思わず私はこう尋ねる。
「MPが1594あるのですが、できますか?」
その言葉に竜が引き気味になりながら「大丈夫です」と答えてくれる。
『ま……まずはパワークリスタルを探します』
「質問です! パワークリスタルとは水晶のことですか!」
と言いながら最近ずっと気になってつい買ってしまった半径10㎝の大きな円形の水晶を時空袋から出す。
『なんと……とても質の高いパワークリスタルでしょう……しかも、あなた様とあいしょうのよろしいパワークリスタルで……』
……相性ってどうやって調べるの? あとでマギライアに聞こ。
『つ……次にパワークリスタルの波長に合わせて魔力を注ぎます。魔力の注ぐ力をしっかり加減しないと壊れてしまうときがあるので気を付けてください』
「わかりました」
とりあえず見えているパワークリスタルの波長らしきものに合わせて魔力を注ぐ。こういう力ってイメージすると結構扱いやすいよね! うーん例えば……水晶の波長とおなじくらいの太い輪の形があって、それが水晶に吸い込まれていくイメージ……。
私がそうイメージしながら水晶に魔力を注ぐ。ちょうどよかったのか波長となじんで紺色の力が水晶の真ん中にたまる。
『この色はめずらしいですね。普通の人たちは透明や灰色なんですよ』
? そうなんだ。私の色、そんなにいないんだねー……。別世界から来たからかな?
『パワークリスタルの波長に合わせて魔力を注ぐのを繰り返せば完成します』
「教えてくださりありがとうございましたー!」
龍(神?)様は恐ろしいものを見たような顔で飛んで行った。あ、湯加減とかリクエストとか聞くの忘れてた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます