第29話 お人形にプレゼント
そのお人形は私達から、浮遊して遠く距離を取る。そして私たちに話しかける。
「お姉ちゃんたち誰? もしかして冒険者?」
その問いに、ライが即答する。
「冒険者だよ。まだまだ新米の方だけど」
その言葉を聞いたお人形が、悲鳴を上げ、顔を青ざめながら私たちに色とりどりの弾幕を仕掛けてくる。
「じゃあお姉ちゃんたち、僕を殺しに来たんだね! 僕は悪いことしていないのに!」
頭の中「???????」が広がる。私は、お人形の攻撃をよけながら黙り込む。
『主! ここは我が……』
「……いったん話を聞いておこう」
お人形は泣きじゃくり、弾幕を展開し続けながら言葉を続ける。
「みんな僕をモンスターとしてしか見てくれない! 人形としていたいのに、毒を持っているせいで遊べない!」
……。
私たちの目の前にいるお人形は、涙をこぼしながら弾幕を放つ。だんだんその弾幕が、彼の涙で出来ているように思える。
「みんな僕の子といたぶって壊そうとしてくる! だから僕はみん……」
……テイム
正直言って、これはひどい話だ。みんなと遊べずに、壊そうとされる。でも私なら一緒に遊ぶことができる。それに、この子を連れて帰って温泉に入れたいからね!
「……なんで僕をテイムしたの?」
お人形が、目から涙をこぼしながら訪ねてくる。
「答えは単純! あなたに『温泉』という存在を知ってもらうため! ……まあ、あとは私には毒は効かないからね。一緒に遊べるんじゃないかなって」
これを聞いたお人形は、死んだ人の夢でも見たかのような声色で私に聞く。
「本当? 本当に遊べる?」
お人形の目にほんの少しだけど、希望の光が宿った。
「うん! 遊べるよ! あとね、私の家に帰ったらちょっとしたプレゼントがあるから一緒に帰ろう!」
と、私は言う。ちょっとしたプレゼントは、帰ってからのお楽しみだ! どんな感じで喜ぶかな? あとどんな風にしよう……
「う……うわあぁぁぁん!」
ちょっと! ……そっか……。
お人形は、泣きながら私に抱き着いてきた。そりゃあそうだもんね……みんなと遊べれなかったんだから。
ライの方向を向くと、安心と感動が入り混じった感じの顔になっていた。
『なるほどな、勾玉で毒を無効化したとは……』
フェンリルが感心した顔で念話をつなげてくる。実は、蛇とか倒している最中に、「ありとあらゆる状態異常」だから、その中に毒も入っていないかなと考えていたのだ。実際毒を無効化してくれている!
「さ、そろそろダンジョンから出よう!」
私は、ダンジョンから出るように促す。
「キュイィ!」
私の真横をフェニックスが飛ぶ。そしてそれをフェンリルが追っかける。さらにそれをライが追っかける……。なんかこう……伝説が伝説を追っかけて、さらにその伝説を神が追っかけていると考えると、絵面がシュールw
私は、お人形の手をつなぎ、感圧板を踏む。
なんかどこからか泣いている声が聞こえたから、そっちを振り向くと、そこにはレヴァルス先生が泣いていた。
「なんて感動する話なんだー!」
先生が感動で涙を流しているのを気にせず、私は先生に聞く。
「転移キー使っていいですか?」
先生は、泣きながらうなずいた。使っていいということだ! やっと帰れるー!
「やっと地獄の日々から抜け出せたんだ……」
私の左下からそんな声が聞こえた。よかったね!
これから毎日あったかい温泉に入ってもらうし、モフモフのコーギー軍団の遊び相手を一緒にしてもうから、から覚悟しとけよー!
3限目の時間までいたらしく、転移キーを起動して戻ったらチャイムが鳴って終わった。
4限目
「テイムについて話します」
「「よろしくお願いします」」
この授業の間は、フェンリルは窓際で昼寝。フェニックスが空を飛ぶ。そしてお人形が授業中ちょくちょくじゃれてくる感じだった。
「そもそもテイムは、500人に1人いるかどうかの確率でいます」
……今やばいことサラッと言ってなかった? まさかだけど、これもチートスキルの一種にはいる?‽‽
「テイムしたモンスターの得意なことを生かしてダンジョンを今日略するのを進めます!」
キーンコーンカーン……ゴーン
いやそれお寺の鐘の音ー! チャイム違いなってるけど大丈夫ー⁉
『主、終わったか?』
「うん。今終わった! フェニックスいる?」
『外で空を行き来しておるぞ』
「わかった。フェニックスー! おいでー!」
「キィィィ!」
「やはり君たちは素晴らしいですね。これで今日の学校はおわりです。」
……そこに関しては
「今日もありがとうございました!」
しっかり先生に挨拶をして、銭湯に直行! いそいで開店準備とかしないと! と、その前に……!
しっかりお人形洗わないとねー!
銭湯で……。
「これが温泉! 早速入ってみて!」
私は、お人形に温泉の種類などを説明する。早速入れてみよう!
入れた瞬間、まさかの出来事が起こった!
「うわあぁぁ!」
バシャバシャバシャ!!!
お人形がお湯に入った瞬間暴れて始めて、私が手を放してしまう。そしてお湯に落下。その勢いで足が滑り、おぼれ始めた! いや、これ小さい湯舟だからおぼれることはないだろうと思ったけど、その考えが甘かった!
暴れるほど水に沈んでいくお人形を急いで湯船から出す。
「うわあぁぁぁ……うぅ……」
お人形は明らかにしょんぼりしてた。えーと、
「ごめんね、私の不注意で……」
お人形に謝らないと……手を放してしまった私がどう考えても悪いから……
「お姉ちゃんのせいじゃないよ……」
や、やさしい……でもこれは私の責任なんだよね……。
えーと、さっきのお人形の状況を振り返ると……水に浮くことができないのと、息が出きないのと……あれ? これってまさか
「そういえば……僕、水恐怖症だった……ごめんなさい」
……えー(困惑)いや、なんとなく想像できたけど、まさかほんとにそうだとは思わなかった……。
水恐怖症とは、名前の通り水が怖いこと! だから雨の時は家にいるしかないかんじだね。ちなみにこの恐怖症はお風呂でおぼれかけたりしたトラウマからなってしまうらしい。
「謝らないでね! あなたが悪いわけじゃないから。えーと……じゃあライ。クリーンかけてあげて」
「りょーかーい!」
ライがお人形にクリーンをかけると、一瞬あのお人形ってわからなかった。真っ白な髪に淡いトキ色の瞳。サラッとした髪はきっちりショートにされていた。ライ曰く、「温泉にクリーンをかけていったり、毎日銭湯の仕事をしていたら、なんかよくわからないけどクリーンが上達した」らしい。どんだけクリーンがうまいの!? っていうかどうして瞳の色まで変わる!? さらにショートカットになってるのはどうして⁉ ……そっちの方が助かるけど……。サービス精神的な?
いったん私は離れる。この間にプレゼント用意したいのだ! そのプレゼントとは、着ているだけで自分の毒を制御できるようになる服だ。えーと……あの子に合いそうなのは……巫女装束なんてどうかな? あの白い
「はい! これプレゼント! 着ているだけで自分の毒を制御できるよ!」
その言葉を聞いた瞬間、男の子は信じられない! って顔をする。
「だまされたと思って着てみて!」
お人形がこっちに浮遊して寄ってくる。気に入ってくれると嬉しいな!
お人形は巫女装束を見ると、首をかしげる。そして私に、想像もしていなかったとあることを訪ねてくる。
「この服、どうやって着るの?」
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