第28話 伝説一匹伝説二匹

 とりあえず下の階層に行く。階段を下り目の前にある部屋に入る。そこに待ち受けていたのは、

 赤と緑のマーブルで、長さが5mくらい横幅2mくらいのどでかい蛇が待ち受けていた。


『主、下がっていろ』


 フェンリル狩る気満々! 風のように素早く移動し、蛇の胴体をがぶりと噛む。そして、そのまま振り回して壁に何度も当てる。蛇は反撃する余地もないまま、壁に何度も当てられる。こっちに当たらないよう気を付けてねー!?


「シュウゥゥゥゥ……」


 お? 倒したのかな? 結構早かったなー。


『久しく大きな獲物だった』


 ご満足な様子でフェンリルが戻ってきた。あ……あれが久しぶりの大きな獲物って……。

 その後は普通にマニフォロー5体同時に出てくるとか、フェーロゴーレムという鉄でできたゴーレムとか出てきたけど、瞬殺☆×10。そうこうして倒した後……、私の足元に、変な感覚がした。


 カチャ……


 あれ? え? もしかして罠? 待ってやばいかも!? こんな時はどうす……時止め? でも不意打ちされた感じだから発動する前に当たるかも!?


「あー! 由衣ちゃーん!」


 ライが焦ったのを横目に、私の視界は真っ白に染められていった。


 キュイーン……


 ……これ絶対罠でどこかに飛ばされたやつだ……。

 目の前には一本の通路。これどうする? 進む方がいいかな? ……何事も進まないとだめだもんね! 進んでみると、大きな扉があった。これ絶対最深部じゃん! ショートカットだったのかな? ライたちが来る暇つぶしにボス倒しておこうかな?


 ギイィィィー……


「キエエェェェン!」


 とても大きい50センチの翼をもち、体に炎をまとい私の頭上を優雅に飛ぶ生き物がいた。

 ……フェニックスやん絶対これ! 伝説とかの生き物に二回あったぞ今日!


 テイム!!!


「ケエェェェェ……キィ?」


 テイムしたら体の炎を弱めて私の腕にとまった。わーい! かわいい鳥だぁ! 私、鳥飼ってみたかったんだよねー♪……伝説の鳥飼うとは思わなかったけど。


「キュゥゥゥゥ」


 今日は伝説系の子をテイムしたな……とりあえず頭なでなで~♪


「キュウー!」


 ? なんか私から離れて感圧板から真逆の方向から通路へと出てった。どこ行くんだろ?


「そっち行くの?」


 とりあえずフェニックスについていく。角を曲がったり、敵をこんがりにしたり……。 どこ行くかわかんないけど、妙に信頼できる。


 5分後……


「由衣ー! ダイジョーブ?」


『主! 見つけたぞ』


「うん! それよりもフェニックステイムした!」


 私からすると、フェニックステイムした方がすごいと思うので、先に報告する。……もしかして、フェニックスは、ライ達がいる所に案内してくれたの?


「……フェニックス……だと? なんて素晴らしいんだ!」


 レヴァルス先生がライの後ろで両手を上げて喜ぶ。


「どこで手に入れたんだ? 教えてくれ!」


 先生が、やや早口気味に聞いてくる。オタクとかによくあるよね(ブーメラン)


「あー、罠に飛ばされた先にボス部屋があったんで、そこでテイムしました」


「? コンフプロヒューダンジョンのボスは、ポイズンドールだぞ?」


 先生がポイズンドールだと訂正する。……あれ? この子ってもしかして裏ボスなんじゃ? でもそんなこと聞いてなかったから……。


「……この子裏ボスですね」


「素晴らしい! ここに裏ボスがいたとは!」


 やっぱ裏ボスの存在知られてなかったんか! そりゃあ情報ないのも納得いくわ。


「よーし! じゃあ改めてボスを倒しに行くぞー!」


 あっ! ちょっと待ってー! そんなにいい急がなくってもいいじゃーん!

 いきよいよくライが走り出す。それを追いかけながら最深部を目指す。 迷子になりやすいから気を付けないとなー……この考えがフラグじゃないといいけど!


 ドッカーン!


 ライが勢いよく行き過ぎて壁を突き破る。私からすると、ダンジョンあるあるだ。……これがダンジョンあるあるって普通ないな。慣れるって、改めて考えると恐ろしい!


「あ、壁突き破っちゃった……ま、いっかー!」


 10分後……


 ライと仲良く迷子中w あの時しっかりフラグが立った模様。正直言ってそんな気はしてた!


「ここどこだよー!!!」


 横でライがくたくたになりながら叫ぶ。そりゃあダンジョンの中だよー!


『主……来た道を引き返すことはできぬのか?』


 実は……来た道忘れちゃった☆ 終わったわー!


『……すまぬ。我も忘れてしまった』


「うー……。フェイックスー。道分かる?」


「キェェ……」


 あー、フェニックスもわからないかー。でもなんでさっき分かったんだろ? 

 うーん……これどうやってボス部屋に行こうか……近くを見渡しても、人はいない。太陽は見えないから、どっちがどの方向かわからない。なんかこういう時用のスキルとか……ん? スキル?


「あ、そうだ! 私には、すべてを見通す目オーミスペルビディオクースがあるじゃんかー!」


 そうだった! ……これでどこか分かればいいんだけど、なんにせよまだ使ったことがないから効果がわからない。


 すべてを見通す目……。


 念じると同時に、すっと体が軽くなる感覚がした。

 うわあぁぁ!? なにこれなにこれ! 壁透けて見えるし、どこにでも行ける感じだから幽体離脱みたい!

 っと、あ! ボス部屋の扉! えーと、とりあえずボス部屋の扉の前に行って、私たちの方へ道なりに進む……。なるほどなるほど。まず右に曲がって、まっすぐ進む。しばらくしたら突き当りだからそこをまた右に曲がる……最初どこ曲がったんだっけ……?

 しばらくしてボス部屋の方向を覚えて穴をあけた方が早いと判断したので、すべてを見通す目を解除。

 ギュイン! っと体の方へ引っ張られる感覚がして、普通の視点になる。


「どうだった? ボス部屋への行き方わかった?」


 ライが心配そうに尋ねてくる。


「ばっちり分かってない! 」


 削除デリート


 私たちのいる所から最深部の扉の前の方向へと、壁と床に穴が開く。その穴を突っ切る! これが私達なりの答えだー!


「君たち! 大丈夫かー?」


 ボス部屋の扉前にレヴァルス先生が待っていた。途中ですれ違わないようここにいたのかー! ……さっきすべてを見通すオーミスペルビディオクースを発動させたとき見えなかったけどなー?


「みんな大丈夫でーす!」


 その声を聞くと、レヴァルス先生は、安心しきった顔になった。正直言って、私は買い物行ったときとかによく迷子になるからこういうのは慣れっこだ。……ライが隣で青ざめてるけど。


「ここで待って基地だったな」


「先生、漢字間違ってます」


 なぜに漢字間違えた? と、困惑しながら指摘する。フェンリルが、このくだらない会話を聞いてため息をついた。こんな感じの日もいいよね!


「まあ、とりあえずサクッとクリアしちゃいましょう!」


 ここで話していても仕方ないので、扉を開く。ポイズンドールってどんな見た目かな? 人型なのかな? それともモンスターの形なのか……とっても楽しみ!


 ギイィィィー……


「……誰?」


 と、扉を開けた先で声がした。そこにいたのは、50㎝くらいの大きさでのお人形。私たちに向けている瞳は、少し濁っているルビーのよう。髪はずっと洗えていないのかぱさぱさで、白色の髪が薄汚れていて灰色になっていることがわかる。そして、何度もの戦闘で破けてしまったのか、所々つぎはぎがされているボロボロの古着を着た、男の子の人形だった。

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