つまるところ、厄介払い(1)
知ってた。奇跡はそうそう起こらないから、奇跡というのだ。
結局まずい料理のままだった私は、日当たりの悪いじめじめした部屋に送られ――ということは幸いなかった。ちゃんと聖女のために用意されていた客室に通された。役立たず認定された私ではあるが、一応聖女ということで丁寧に扱われるらしい。この点においては、過去の聖女様たちに感謝である。
「にしても、漫画のようにごふって言って吐かなくても……」
きっと「美味しいに違いない」って先入観があったのだろう。あと、見た目に
一口目は少しでと忠告した私は悪くない。
「はぁ……まさかまずいと言って食べるのを止めたあいつの方が、マシな反応だったなんて」
召喚される直前に私が大荷物だったのは、
こちらの趣味は『下手の横好き』ではなく、『好きこそものの上手なれ』が適用されたと思う。コンテストでは毎回入賞者であったし。
しかし喧嘩の最中、元彼は「彫刻が趣味? 一般家庭で飾らないし。そんな趣味、誰得だよ」とあろうことか鼻で笑ったのだ。あの男とは別れてよかった、うん。
「でもそうか……私の料理はそこまで壊滅的か……」
その事実は、さすがに心を
元々、昔好きだった少女漫画の主人公を真似て、私は料理を始めた。主人公が美味しい料理を披露して、男主人公と仲良くなるストーリー。ありがちではあるが、主人公も男主人公も大好きだった私は、自分もそんな恋愛を夢見た。
異世界に来て心機一転と思いきや、世の中なんてままならない。
「うぅ、胃がキリキリしてきた……」
私は両手で胃を押さえた。これは決して自分の料理を食べてそうなったわけではない。……と、信じたい。
そんなやや前屈みになっていた私の耳に、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
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