しらゆき姫 題材 りんご
私の母親は、私が五歳の時に死んだ。
10歳になり、父親の浩二が新しい母親を連れてきた。
「真城良です。よろしくね。
上手くやれそうだと思った。けれど。それは私の見立てが甘かったようだ。
真城は私に対して、すごく厳しかった。というより目の敵にしているようにも思えてきてしまった。
「箸の持ち方ひどい。治して、こうだよ」
「マナーがちゃんと出来るようにならないといけないよ」
「ほら、だめ」
正確にはマナーを身につけてほしくて、指摘しているらしい。けれど、私にはそれがうざく思えてきてしまった。
「
「はいはい」
「返事がふざけていない?」
私は真城がうざく思えてきて相手したくなくなる。私のためなのだろうけれど、父親が如何に放任してくれていたのかと実感した。
私は真城と一緒にいたくなく、外に出た。
家の外に出ると、
「こんにちは」
「いつも元気だね」
私の挨拶に針田が喜んでくれた。なんで喜んでいるのだろうかと思った。
私は公園に向かう。公園には同級生の
「折田くん。遊ぼう」
「おう」
折田に声を掛けると、返事をしてくれた。私は少しだけ嬉しくなる。
先ほどの真城とのやり取りの
「お前の家、新しい母さん来てって聞いたけど」
「うん。そうだよ」
「どうなんだ?」
「口うるさい感じ」
「へぇ。合わないの?」
「うーん」
私は折田の質問にはっきりと返事をしなかった。「合わない」わけではないとは思う。
口うるさい、目の敵にされたという感覚は私の一方的な
「あのさ。もし。嫌いなら俺が殺してやろうか」
「え?」
「だから。殺してやろうか?」
「何を言っているの?」
折田のことは以前から、変わっていると思っていた。「殺す」って人の命を奪うということだろう。極端すぎて、私は驚く。
「殺すって。人殺しはだめじゃん」
「俺らって10歳じゃん。だから少年院で済むし、なんなら」
私は折田が恐くなり、ボールを返す。折田の言っていることが有り得なさすぎる。
「ごめん。帰る」
「いつでも言えよ。俺。
「もう。それはいいから」
私は折田に背を向けて、自宅に向かう。私は折田が可笑しいと思う。
未成年だから、少年院で済むし将来、
どうしたら、そんな可笑しな考えに行き着くのだろうか。理解したくなかった。
私が家に帰ると、真城がすぐに居間から出てきた。
「どこに行っていたの?」
「うん。ちょっとね」
「よかった。私を嫌いになって家出かと」
「そんなこと」
「実はちょっと厳しすぎたかなって思って」
「そんなことないよ。真城さんは私のためを思って」
真城は私を抱きしめた。私のためにやっていたのが、伝わってくる。真城が私から身体を離す。
「そうだ。りんご
「ありがとうございます」
私が居間の椅子に座ると、真城がテーブルにりんごを出す。りんごは綺麗に
「これ。種とらなくていいんですか?」
「りんごはね、
私はりんごを口に入れる。ふと、りんごの種を食べるのは良くないという情報を思い出した。けれど、それは本当の情報なのだろうか。
私は一応、種を吐き出す。
「姫美子ちゃん。出されたものはちゃんと食べないと。りんごの種もね」
「え?」
「だから。りんごの種も食べないと駄目だよ」
真城の表情が恐く思えた。りんごの種は確か、毒だったと思う。
本当かは解らないが、何かの情報で見たのは確かだ。
私ははっきりと「毒」という情報だけ思い出した。
うろ覚えだが、種にシアン
真城は私を殺したいのだろうか。私は恐くなり、椅子から飛び降り居間から出た。
了 45:13
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