病は気から 題材 ストレス
出勤の電車で下車した後、階段を上る人が遅いことにイラついていた。
「なんでそんなにトロトロしているの?」とぼそりとつぶやき、追い抜いていく。
上手に追い抜いて行く。上手に追い抜ける時はいいが、そうでもない日もある。
人が多い分だけ、空間もない。追い抜けられなった日は最悪だ。
最近はそんなことを思っている。
今日はうまく追い抜けられた。 来田はいい気分で会社に向かう。
会社の入口の警備員に声をかけられた。
「今日は機嫌がいいですね」
「そうかな。うまく行ったからね」
「何にうまく行ったか知らないですが。良いですね!ここ最近、イラついてるように見えたので」
来田はこの警備員と少し会話を交わす間柄だ。彼女は警備員の気遣いが少し嬉しくなった。
「うん?まあ。ちょっとね」
「うまくいっていないんですか?」
「まあ」
来田は最近あったことを思い出した。
付き合って3年の彼氏が浮気の末、借した3万円を返せずに逃げた。
音信不通でどうしようもない。これが心当たりある、うまく行っていないことだ。
それを口にするの
「何か。大変そうですね。俺で良ければ話を聞くよ。コレ連絡先。無理だったら捨てていいから。お仕事頑張って」
「あ。ありがとう御座います」
来田は名前も知らない、少し話すだけの警備員から連絡先が書かれた紙を渡された。
後で捨てようと思っていた来田はそれを見る。その紙にはメッセージアプリのIDと名前が書いてあった。名前は「
来田はこれが警備員の本名か解らないが、変な名前と思った。けれど、少しだけ興味が湧いた。
来田は連絡する気はなかったが、仕事の休憩中にメッセージを送ってみた。
『IDありがとうございます。私の名前は
少し時間が経過してから返信が来る。
『こちらこそ。ありがとうございます。ライタさん。よろしく。万須は本名です(^^)v』
『返信ありがとうございます。そうなんですね!びっくりしました!やっとお昼ですね』
『ビビりますよね笑。こっちも今お昼です!』
来田は万須と何気ないやり取りをする。
来田は少しだけ心が癒されていく。彼女は万須が連絡先を
仮に万須に下心があったとしても、来田にはどうでもよくなっていた。
けれど、来田は気になるので質問する。
『何で連絡先を教えてくれたんですか?』
『実は俺の姉がライタさんみたいにいつも、イライラしていて。やけを起こして、突然死してしまったんだ。
だから、そんな人になってほしくなくて。ライタさん以外にもそんな人がいて。
助けたいって思って。精神カウンセラーの資格とかないけど。
話くらいなら俺でも聞けるかなと』
来田は万須の返信に少しだけ驚いた。他人にここまで思えるのは素晴らしい。
万須の話は本当の出来事なのだろう。来田は自身の身に起こったことを返信に書く。
『実を言うと。3年付き合った彼氏が浮気してね。
更には私から3万円借りていて。音信不通になったの。それでイライラしてるかな』
少し時間が経過してから万須からの返信が来る。
『それってどれくらい前?』
『一ヶ月くらい前かな』
『住所や勤務先、わかる?』
『住所というか実家がわかる感じかな』
『じゃあ、
後でURLリンクを送るよ』
来田は万須の予想外の返信に驚いた。来田は万須に相談して良かったと思った。
万須からのメッセージが更に届く。
『内容証明郵便に法的な拘束力ないけど。相手に心理的なプレッシャーを与えられるんだ。
あとで、それでうまく行かなかったら、専門家に頼んだほうがいい』
『ありがとう御座います!なんかスッキリした!』
『いえいえ。"病は気から"ってホントで。ストレスを感じると、免疫に影響するんだ。
2017年の北海道大学の研究だと胃腸や、消化器系疾患を引き起こすんだ。
炎症が小さければいいけど。
『そうなんだ。何だかすごくためになったし、本当に気をつけようと思った。ありがとう御座います!』
『どういたしまして』
来田は万須とのメッセージのやり取りを終えた。彼女は物凄く、充実した昼休みになった気がした。
来田は万須が後日、送信してくれた"内容証明郵便のやり方"を参考にした。そのやり方で彼氏に連絡した。
彼氏はすぐに連絡が来て、来田はお金を返してもらった。
了 50:42
参考
https://www.igm.hokudai.ac.jp/neuroimmune/old/jpn/research/11-Stress-eLife.html
https://saimu-limit.jp/column/syakuyousyo/
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