自分の意見 題材 「自己主張」

 私のクラスは比較的、まとまりのある感じだ。

 リーダーの戸田とだ理恵りえがまとめてくれている。

 理恵は結構、クラスメイトに好かれている。彼女は困っているクラスメイトをよく助けているからだ。

 私と理恵とは友達で、私自身もいつも助けてもらっていた。

 理恵はクラスをまとめる係だ。それ故に苦労も絶えない。

 中でもクラスの決め事の際、絶対に意見が割れる。

 自由な議論は大事だが、個人的に理恵に突っかかってるクラスメイトいるのだ。

 須田すだ理恵りえだ。

 彼女は理恵と同じ名前だが性格はあまり人と群れない感じの一匹狼おおかみだ。

 感じが悪いわけではない。話し合いのときに絶対、「反対意見」を言う。それは悪くない。

 自由な議論の上では大事なことだ。

 私はこの人が絶対に合わないと思ってる。

 今日はクラスの文化祭の出し物を決める日だった。

 多数決で「メルヘンたこ焼き屋さん」になった。普通のたこ焼き屋さんだと面白くないから、「メルヘン」になった。

 理恵が意見を最後にまとめた。

「じゃあ。それではメルヘンたこ焼き屋さんになりました。異論はないですか?」

「ないです」

「私もそれでいいです」

他のクラスメイトたちはそれに同意するような言葉を口々に言った。そんな声をかき消すように須田が口を開く。

「あのさ。なんでメルヘン?」

「それは思いついたのがメルヘンだったからだよ。で、多数決とったらそれがいいねってなったから」

 理恵が説明した。理恵の説明に須田は反論するまでなく言葉を発する。

「前から思っていたんだけど。皆さんクラスのリーダーに頼りすぎじゃない?戸田さんを比定するわけじゃないけど。皆のことなのになんで自分の意見言わないの?」

 私は須田の指摘に共感した。けれど須田が個人的に苦手だから、すこし不快に思えた。

 それよりも、須田は理恵がクラスメイトに好かれていることへの嫉妬からの意見に見えた。

 須田の言葉にクラスメイトが黙る。理恵が口を開く。

「あ。でも、思い浮かばないとかもあるじゃん」

「戸田さん。確かに思い浮かばないにしても、クラスのことは生徒自身が決めないと」

「だけど、多数決で決めたじゃん」

「そうだけど。「自分の意見はないの?」っことね。そうやって大事なことを他人任せにしていいのかなって私は思うよ」

 須田は自己主張をしているように見えた。

 けれど。言われてみれば「自分の意見を持つこと」をしていないような気がする。

 というのは先生が言ったことや他人が言ったこと、「誰が言ったこと」を考えなしにそれに従う。

 その場所で評価の高い人間が言ったことを疑いもせずに信じる。

 私は須田がなんとなく嫌いだが。彼女が嫌いな理由は、"痛いところ"を突いてくるからなのだと思った。

 反論できない正論だ。

「自分の意見が持てない」。

 私はそれへの苛立ちなんだと自覚した。理恵も須田の言葉に感心しているようだった。

「そうだね。須田さんの言う通りだね」

「でしょ、考えて考えぬいて浮かばないなら仕方ないよ。でも。誰もアイディア出さなかったじゃん」

「そうだね。私が間違ってたね。今なら無地のプリントを配るから、何でもいいからアイディア書いてね」

 理恵は何も書かれていないプリント用紙を配り始めた。

 他のクラスメイトが「うわ、めんどくさい」と呟いていたが、須田が睨みつけると静かになった。

 クラスメイトの中には確実に須田に対して厄介な要求してきたなと思っているのが確実だ。

 でも。私はこれでいいと思った。更には初めて、須田のことをすこし理解出来た気がした。

 自分で決める。自分で考えて、自分の意見を持ち、臆することなく主張する。

 これが出来る須田が私は羨ましかったんだ。

 私は自分の意見を持つ大切さをプリントを受け取りながら思った。

 私は筆箱からシャーペンを取り出し、思い浮かぶアイディアを書き連ねた。

了 41:40 題材 自己主張

 

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