マスク越しの素顔 題材「錯視」

 それは運命的な出会いだった。4月の春うららかな日だ。

 俺は花粉症でマスクが欠かせなかった。

  俺の顔は所謂いわゆる、他人が認めるイケメンの部類だ。

  マスクをしていてもイケメンと言われる。

 そんな中、眩しいくらいの美女に出会った。昼休みに昼食を買いに行ったコンビニに美女がいた。

 目がキリッとしていてはっきりとした二重。

 マスクで顔の半分以上がかくれているが、相当の美人だと解る。

 俺はその女性に少しれた。

 仕草しぐさも雰囲気も良くて、品があるように感じた。

 その女性は颯爽さっそう買い物を済ましているのもよかった。

 俺はどうにかして知り合うキッカケを探そうと思った。


 友達のしましんに昼食を食べながら、相談に乗ってもらおうと思った。

「なあ。すごい美人がコンビニで買い物してたんだけど」

「すごい美人って??」

「マスク越しでもわかるくらいの美人」

「それってマスク美人じゃね?」

 島田は小馬鹿にしたような言い分だった。俺は少し不愉快な気分になる。相談したのが間違いだったと思えてくる。

「お前に相談したのが間違いだった」

「いやー。あのさ。人って"見えないところ"を都合よく解釈するよね。だって。人の目というか脳ってそうじゃん」

 島田は焼きそばパンを食べてからスマホを取り出す。

 スマホを起動させ、画面を見せていた。その画面はバームクーヘンみたいな形の図形が、2個並んでいた。

「これって。全く。同じ大きさなんだよ。上のが短く見えるだろう」

「ああ」

「そういうこと。これって。ジャストロー錯視って言うんだよ。同じ大きさのをならべると、の中心の側に置いたほうが大きく見えるやつだよ」

 島田はスマホを閉じてしまう。ペットボトルの水を一口飲むと、「あー」と言った。俺はなんとなく、それとマスクが関係あるように思えなかった。

「だから。脳は都合よく解釈するんだよ。マスク以外のパーツ、見えている顔のパーツ、目、顔の輪郭りんかく、頭の形がよかったとしても。そのマスクの下はどうだろうか。都合よく解釈してしまうよな」

「あー。そうかもな」

 俺は自分自身の顔を思い出した。自分の顔は自他ともに認めるイケメンだ。

 顔の全体が見えてイケメン。マスクしていてもイケメンらしいが。

「そ。そうだよな。俺みたいにイケメンだったり、美形かもわからんな」

 俺の言葉に島田が変な表情をする。俺は島田が何故、そんな顔をするのか理解できなかった。島田が咳をする。そして再び口を開く。

「まあ。そういうことだ。その美人と知り合うにはだけど。話しかけてみるしかないよ。で、マスク越しの素顔がわかればいいのでは?ま。人は顔だけじゃないと俺は思うよ」

「まあ。それは俺もそう思ってるけど。美人と知り合いたいとなとは本心で思う」

 島田は俺の言葉に呆れた様子だった。見かけた美人のマスク越しの素顔が俺の思った通りだったらなと思った。

了 40:44 題材「錯視」

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