平等な神様 題材「平等」

 私が本を読んでいると、クラスメイトの森野もりのけいが話しかけてきた。

 森野とは特別、友達でもない。話したことはほとんどなかった。

「高野さん」

「何?森野さん」

「あのさ。突然だけど。平等な神様っていると思う?」

「ん?」

 私は突飛な質問に困惑する。森野は私の反応を楽しんでいるのか、それとも茶化して質問しているのか。

 そのどちらでもないように見えた。私は考える。森野は私を見つめる。

「平等な神様?」

 私がつぶやくと、森野はその次の言葉を待っているように見えた。

 平等な神様って何だろう。

 生物に平等に振る舞う神様なんていただろうか。私には全く解らなかった。

「森野さん。いないと思う」

「そっか。高野さんもいないと思うか。色々な人に聞いてみた。ほぼ皆、いないって」

 それはそうかもしれない。平等な神様って。

 神様が生物に平等に与えることはない。

 全ての生物に平等に与えているとしたら、この世界が結構めちゃくちゃになるのではないだろうか。

「じゃあ、なんで聞いたの?」

「ん?いるのかなと思ったから」

「へぇ」

 私は森野が変わった人に思えた。

 当たり前すぎることを聞いているように思う。

 神様が平等に生きている存在に扱っているなら、紛争だって起こらない。

 人類だって繁栄はんえいしないだろう。その質問自体が不毛に思えた。

「森野さんはどう思う。もし仮に神様が生きとし生けるものたちに平等だったら、どうなると思う?」

「ん?そうだね。今以上にめちゃくちゃになるだろうね。だって平等でしょ。「生きている存在すべてに平等」ならね。食物連鎖ヒエラルキーもなくなるだろうし」

 森野は私と同じ考えなのか。少し面白い気がした。

 確かに「平等」なら、「食物連鎖のヒエラルキー」成り立たないだろう。

 森野は中々に哲学的なのかもしれない。森野は続けて話す。

「神様が平等でないことで、人類や様々な存在が生きているのもあるだろうと思っている。だから「平等な神様」はいない。これは事実なんだなと思う。そうやって人類は発展してきたと思う」

 なんだかちょっと、私とほぼ同じ考えで親近感が湧く。人類が発展したのは「不都合なこと」を自力で解決していったからだ。

 けれど、それと同時に「平等な神様はいない」という考えなら、本当に第三者の他人に聞く必要があるのだろうか。

「そっか。森野さん。話しかけてくれてありがとう。また質問するけど、どうして、皆に「平等な神様がいるか」聞こうと思ったの?」

「いや。ふと。神様って平等じゃないじゃん。平等な神様っているのかなって。思って。それだけ。私はいないと思っているけど。皆はどう思っているかなと」

「そうなんだ。なんか面白いね」

「そう?大体がうざいって思われて。ちょっと落ち込んでた。高野さんならちょっとしっかり答えてくれるかもって。思って。そしたら、答えてくれて」

 森野は嬉しそうにしていた。確かに「平等な神様っているの?」なんて突飛な質問はうざいと思う人がいるかもしれない。

 でも、改めて考えると面白いものが見える気がした。

 現に私自身が「神様」とはなんだろうかと考えるのが面白くなってきた。

題材「平等」

23:03

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る