ルナ 2
織風 羊
第1話
「そうだろうか? 相対性理論ができ、そして量子物理学という学問が生まれ、そして質量保存の法則が瓦解した。確かに君達の歩んできた道は誤ってはいないと思う。でも、一つ聞きたいことがある。物質はあるものに変化する時、エネルギーを放散しながら変化して行く。そのエネルギー量と形の変化、質量の変化、それらを総合した測定、観察によって得られた変化はイコールである、が、それが質量保存の法則だった。そして今、現実に観察できないものにまで挑戦し、応用物理学を持って方程式上で解明しようとしている。そこにはアインシュタインの相対性理論が成立し、質量保存の法則は存在しない? いや、まだ答えないで聞いていて欲しい。しかしだ、私達の星の物理学では、質量保存の法則は成立するんだ。無くなった形、そして無くなった質量、それは私達の見えない空間へ移動したと考えるべきなんだ。例えば超新星爆発が起こった時にできるガス星雲には水素とヘリウムが存在する。その星雲の中には、中性子星、白色矮星、そしてブラックホールが存在する。熱量を持たない星は、死の星として存在し続けるであろう、月のようにね。また、熱量を持った星は核融合を起こし成長していく。ガスとして存在する水素なども、重なり合い、核融合を続け、やがては恒星として巨大な星になる。何億年もかけてだがね」
「・・・・・・・・」
「人ではどうなんだろう? 君達は人が死んだら、土に帰るだけだという。ここには質量保存の法則は成立していると思うだろ?」
「・・・・・・・・」
「だがね、私達の物理学でも理論的には同じだが、結果が違うんだ。もしもだ、死ぬ直前の体重と直後の体重を測定したら、重さに変化があるはずだ。ということになればだ、君たちの言う質量保存の法則ではなく、私達の言う質量保存の法則が成立するんだ」
「・・・・・・・・」
「そんな不思議な顔をしなくとも良い。良いかい? ここからが私達の応用物理学だ。質量、今回は体重についてだが、生前と死後の体重に変化があるのは、生命エネルギーが肉体を離れたからなんだ。その生命エネルギーは、誰かが死んだから、別のところで誰かが生まれる、と言うような単純な保存の法則ではなくて、生命エネルーギーは空へ飛ぶんだ。そして宇宙を彷徨い、超新星爆発によって出来た何億、何兆、それどころじゃない数の新しい星に生命エネルギーが宿るんだ。星は生きているんだ。君達が夜空を見上げれば見えている星の全てに、この宇宙で生きてきた人達の生命が、それぞれの星に宿っているんだ。光を放ちながら、あるものは光に照らされながら。星は魂のハビタブル・ゾーン、生命移住可能領域なんだ」
「・・・・・・・・」
「分かるかね、リー」
海賊船ルーナ号船長クロウは、そう言い残すと部屋を出て行った。
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