私立幻が丘高校文芸部

@assembly

第1話 体育館

 私立幻が丘高校文芸部の部室は、体育館の倉庫だった。

 したがって文芸部員たちは、跳び箱だの平均台だのといったおよそ文芸部らしくないものに囲まれながら、部活動に勤しまなければならなかった。

「どう考えてもおかしいですよ」と一年の真岡は言った。

「といってもなあ、生徒会が決めたことだしなあ」と二年の浦島は言った。

「浦島さんがそんな感じだから、生徒会の連中に舐められてるんですよ!」

「シッ……声がでかいってばあ……生徒会に聞かれたらどうするんだよお……」

 真岡は怒っていた。

 伝統ある文芸部がこんな仕打ちを受けていることに真岡は耐えられなかった。

 それだけでなく、先輩たちがそうした仕打ちに甘んじていることも、我慢ならなかった。

 俺が文芸部を立て直さなければ。

 本気でそう考えていた。

「あのなあ、真岡よお、お前の気持ちは分かるけどさあ」

「浦島さんに俺の何が分かるっていうんですか!」

「まあまあ、人の話は最後まで聞けよお。損はさせないからさあ。頼むぜえ。落ち着いてくれってばあ。そうだあ、景気づけに一発ギャグでもやろうかあ。面白いぞお、俺の一発ギャグはあ。この前なんてなあ、笑いすぎて病院送りになったやつもいたんだからあ。危うく停学食らうとこだったんだぜえ。すごいだろお」

「ふざけないでください!」

「俺は大真面目だってばあ。何だか俺まで腹立ってきたぞお。お前も病院送りにしたろかあ」

 一触即発の雰囲気。

「この戦争を、終わらせに来た」

 ここにシャンクスよろしく、颯爽と現れたのが我らが部長、福山である。

 ほとんど全裸だった。

 無駄にマッチョだった。

 それもそのはず、福山はSASUKEガチ勢だったのだ。

 好きな偉人を聞かれると、山田克己と答えていた。

 それくらいSASUKEガチ勢だった。

 もちろん自宅にはSASUKEの自作セットがあった。

 顔も山田克己そっくりに整形していた。

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